第62話

私の人生において、こんなことが起こるなんて夢にも思わなかった。


興味がないわけではないが縁などないと思っていた行為。


ただでさえ一方的に寄せる恋愛感情は、罪悪感の元なのに、その上、彼をそういう対象に見るだなんて“プリンセス”を穢す行為だと流石に気が引けた。


私は響が幸せになってくれればいい。隣でなくても近くで……彼の生涯を見届けられればそれでいい。


そう言い聞かせてきた15年間の行く末……——



「あっ、……ひび、き」


「可愛い声出すじゃん」



愛しの真壁響から与えられる快楽に鳴されている。


深いキスを続けながら片手で私のシャツのボタンを外した響。ブラトップの下に忍び込んだ手が腹部から胸の間をスルリと登る。


入浴中、自分でなぞったって何も感じないのに、彼に触れられた場所が火傷したように熱くなるのは何故なのか。



「……っ、やだ、くすぐったい」


「ふ、そりゃよかった。そのうち“気持ちいい”に変わるよ」


「っ、あ」



キスをやめて、私の反応を観察するように距離を取る響。


思考が鈍る。制御機能を失った欲のまま、視界を映る美しい彼に釘付けになっていれば、次の瞬間、弾かれるような感覚が胸先に走った。



「……っひ、」


「ふふ、可愛い」


「っ、」



意地悪な顔で笑う響を睨みつけ、もう声が出ないように唇を噛むが、



「あー、唇噛むなよ」


「ん、っ」


「血の味のキスはいやだろ?」



聞いたことのない甘い声でそう言って、私の唇をぺろりと舐めた。


ドクンと心臓が弾んだ拍子に思わず口を開けてしまった私の負け。ぬるりと舌が滑り込むと同時、先ほど強い刺激を受けたソコを彼の指先が捏ね始める。


部屋に響く嬌声。口を閉じることはもう不可能と知り、今度は耳を塞ぎたくなった。

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