第43話
『響、警察に行こう』
『ん……』
それからのことは響と響の両親しか詳細を知らない。
程なくして響を誘拐した女性は拉致監禁の容疑で逮捕され、取り調べにおいて『綺麗な子だと以前から目をつけていた』と供述したことを新聞で読んだ。
「はー……この世の人間全部消えればいいのに」
「……」
「涼だけでいい」
私の手を嗅ぐついでに唇が当たる。そんなことにドキッとすれば「あ、匂い変わった」とか言われるから本当は振り払ってしまいたい。
エレベーターが目的の階に着くと「行こ、涼」と口角を上げる響。
あの事件のことを思い出せば、この自然な笑顔が見られるだけで、もうそれ以外は何もいらないと思える。
彼の中にだけある記憶が今もなお彼を苦しめ続けているのなら、私はそれを癒し、支え、とにかくそばに居てあげたい。
それが彼を【守る】ってことだと思うんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます