第43話

『響、警察に行こう』


『ん……』



それからのことは響と響の両親しか詳細を知らない。


程なくして響を誘拐した女性は拉致監禁の容疑で逮捕され、取り調べにおいて『綺麗な子だと以前から目をつけていた』と供述したことを新聞で読んだ。



「はー……この世の人間全部消えればいいのに」


「……」


「涼だけでいい」



私の手を嗅ぐついでに唇が当たる。そんなことにドキッとすれば「あ、匂い変わった」とか言われるから本当は振り払ってしまいたい。


エレベーターが目的の階に着くと「行こ、涼」と口角を上げる響。


あの事件のことを思い出せば、この自然な笑顔が見られるだけで、もうそれ以外は何もいらないと思える。


彼の中にだけある記憶が今もなお彼を苦しめ続けているのなら、私はそれを癒し、支え、とにかくそばに居てあげたい。


それが彼を【守る】ってことだと思うんだ。

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