第33話 完全犯罪
「改札さえ突破してしまえば……」
千葉支部まで徒歩5分の道のりを一っ飛びでやってきて、今は向かいの建物の上にいる。
ここからが、勝負。
まずは協会の玄関に着地。
シュタッとね。
1週間分の食料を背負っているが、音も無く着地で来た。
ものすごい進歩だ。
ダンジョン内でレベル9999の状態で一生懸命手加減を練習しているせいか、レベル999になる外では加減も大分うまくなっているのかもしれない。
(一般的な生活に戻れる日も近いかもしれないな……)
透明な自動扉の向こうにはダンジョンの入口が見え、その手前には改札機が置かれていてる。
あの改札にライセンスを翳すと中に入れるんだけど、俺がダンジョンに入ったのが記録に残るし、何日も帰ってこないことまでわかってしまう。
俺は初心者ってことになってるし、泊りで何日もダンジョンに入ってるとなると新井さんが心配して捜索隊を出してしまうかもしれないので、それは避けたい。
ちゃんと探索計画を提出すればそれは避けられるんだけど、それだと52階層へのボス部屋が開いた時期と完全に被ってしまうので、疑いの目が向けられてしまう可能性が残る。
じゃあどうするかと言えば……。
自動扉が開いた瞬間、真ん前にあるダンジョンの入口の天井ギリギリを狙ってジャンプする。
この高さならカメラにも映らないはずだ。
シュタッとダンジョンに階段に着地する。
(フッ、完全犯罪。あっ……)
よくよく考えたら普通に犯罪だった。
まあやっちまったものはしょうがない。
警報も鳴ってないみたいだし、あとは階段を降り切ったところの受付に座っている職員の目を誤魔化せればOKだ。
冒険者は兜を付けているのが普通だし、普段は顔を隠していても誰も気にしないんだけどね。
ただ今は堺達のことがあったので、そういう人物が通ったら声を掛けてくる可能性がある。
さっきのガバガバな改札も見直した方がいいんじゃないかってネットでは言われているし、もしかしたらこの方法が使えるのは最初で最後になるかもしれない……。
(いるな。二人……)
もう少しで階段を降り切ろうと言うところで会話が聞こえてくる。
階段を降り切っていないのでこの時点でまだレベルは999相当だが、それでも耳はすごく良くなってるからね。
深夜なので新井さんはもういない。
新井さんは俺のことを気に掛けてるみたいだから、これぐらいの変装だと見破られる可能性があるからいない時間を狙ったのだ。
(フッ。持てる男は辛いぜ)
念には念をってことで、階段を降り切る前、受付にいる協会の職員達の視界入る前に先程と同じようにジャンプして一瞬で受け継目の前を通り過ぎる。
そして直ぐに脇の小道に入って姿を隠す。
『あれ?今何か……』
『何々、怖い。やめてよー』
『いやいや、そういうんじゃないって。あ、でも、埼玉ダンジョンって出るらしいよ。同期が向こうにいてさー。やっぱり同じように深夜を過ぎた時間帯に受付してたら……』
『やだー。私そういうのダメだからー』
セーフ。
なんか幽霊の話になった。
レイスみたいな幽体のモンスターもいるとは聞いたことがあるけど、幽霊はそれとは別なんですかね?
俺は霊感というヤツが全くないのだが、レベルが上がった今ってどうなっているんだろうね?
(ちょっと怖くなってきた……)
兎に角、改札を無理に突破したのに受付の方で動きがないということはバレていないとみていいだろう。
この時点で引き返すことも考えていたからね。
最大の難関は突破した。
あとは下りるだけだ。
できたら早めに誰もいない35階層以降に下りたいね。
初めてダンジョンに入ってレベルが上がって以降あまり眠くならなくなった。
これ自体はいいことなんだよね。
たぶんからだが丈夫になってあまり疲れを感じてないってことだから、一日二日なら徹夜でも大丈夫だ。
だけどその分かはわからないけど、眠りが深くなって気がする。
一回寝ると自分で目を覚ますまで、目覚ましが鳴っても起きられないことがしばしば……。
なので寝るなら人のいない場所にしておきたい。
(寝てる間にマスクを剥がれたら困るからね)
今は千葉のトップクランだった『ブラックローズ』もいなくなって、34階層以降には人がいないはずだ。
元々千葉ダンジョンでは34階層にある溶岩エリアのせいで、その先には電気も電波も通っていない。
なので千葉にはあまり強い冒険者はいないのだ。
それ以降に進みたいなら他のダンジョンに行った方が楽だからね。
34階層までは休憩もそこそこでいいかな?
でも溶岩エリアって言うのだけは気になるね。
落ちたらレベル9999でも死にますかね?
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