第18話
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
柴乃のお説教(?)が終わった後、俺も柴乃もお互い無言の時間が続いていた。カチカチと時計の針が進む音だけが流れているこの空間で、俺と柴乃は丸いローテーブルを挟み、向かい合いながら座っていた。
しかし、家に誘ってきた張本人であるはずの柴乃は、さっきから急に黙ってしまい目を合わせようともしてこない。ずっとうつむいている状態だ。
そんな状態である柴乃に声をかけるのはなんとなく憚られてしまい、俺は柴乃が持ってきてくれてたジュースをちびちびと飲み続けることしかできなかった。
「あの…」
俯いたまま控えめに声をかけてきた柴乃は、今までとは違いどこか声色に力がない。柴乃自身、発言するのをためらっているように俺は感じた。
「…どうした?」
柴乃の雰囲気の変化を感じた俺は、勤めて冷静に返事をする。ここで俺がいつも通りの返事をしないと、柴乃がなおさら口を開けなくなってしまうと感じたからだ。
「灰斗くんは、クラスメイトにはナンパの件を誤魔化してくれと言っていましたよね」
「あぁ、まぁそうだな。極力学校では目立ちなくなかったし…」
結局その願いはかなうことはなかったが。
色々あったせいでどこか遠い記憶となってしまった今朝の記憶を掘り起こし、俺は少し憂鬱な気分となる。明日からはもっとひどいんだろうなぁ。
「…ではなぜ、あの時私たちを助けてくださったんですか? 目立つのが嫌なら見て見ぬふりをするのが得策だったと思います。もちろん、私たちは灰斗くんが助けてくださってうれしかったのは間違いないのですが、灰斗君の話を聞いてからどうしても気になってしまって…」
なんだ、そんなことかと俺は心の中で納得する。
「別に大した理由じゃないよ。あそこで聖女様たちを見捨てたら、そっちのほうが寝つきが悪くなると思っただけだ。それに、顔を見られたとしても、普段ぼっちで過ごしている俺に聖女様たちが気づくわけないと踏んでたからな」
まぁ俺のそんな甘い考えは、目の前に座っている黒聖女によって破壊されたわけだが。
とはいえ、俺はあの時の選択に関しては全く後悔していない。再度同じような場面に遭遇しても、俺は助けることを選ぶだろう。むしろ、助けなかったら俺は後悔していたと思う。
「そうだったんですか…。改めてあの時はありがとうございました。正直、私は少し諦めを感じていました。通行人は見て見ぬふりで誰も助けようとはしてくれませんでしたし…面倒ごとに首を突っ込もうとする人なんてなかなかいないですし、当たり前といえばそうなんでしょうけど」
俺の言葉を聞いた柴乃は、顔を上げさっきよりは少し明るくなった口調で、自身の心情を語りだす。
「だからこそ、灰斗くんが助けてくださったときは本当にかっこいいと思いました。今日の学校で意地でも見つけてやると桜と誓い合っていました。今日ほど自分の記憶力の良さに感謝したことはないですよ。助けてくださったとき、名前までは憶えていませんでしたが、同じクラスで見たことある顔だと思っていたんです」
「なっ、まじか…」
どうやら助けたときには既に俺の未来は決まっていたらしい。一度もかかわったことすらない俺の顔を、同じクラスというだけで覚えていたというのはさすがに予想外だ。
「探すのに苦労はしましたよ。灰斗くん、全然友達いないから誰も貴方のこと知らなかったんですよ。そのせいで、いろいろな人に話を聞く羽目になってしまったのですから」
「悪かったな友達が少なくて」
「そのおかげで、話が回っていきましたし、外堀を埋められたって考えたら悪くはなかったですけど」
「俺は大迷惑だよ」
柴乃の発言に俺がツッコむと、柴乃はくすくすと笑いだす。いつの間にか、先ほどまでの緊張感はなくなり、柴乃も昼間の小悪魔な部分を再度見せ始めてきていた。
いや、小悪魔な部分はずっと潜んでてほしかったな。
「一応、灰斗くんの生活環境を壊してしまったことについて申し訳ないとは思っていますよ。それ以上に見せしめたいという欲が強いだけです」
「できればその欲は抑えてほしいけどな」
「それが無理な話だというのは、灰斗くんが一番理解しているのでは?」
「…まったくだな」
にやりとする柴乃に対して、俺は降参とばかりに両手を上げるしかなかった。
シリアスな雰囲気を書いてみたいと思ったけど無理でした。泣いちゃうね
白聖女と黒聖女の間に挟まりたくはない! 海野 流 @kai0319
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