何度目かの春①
財布に殆どお金が入ってない事に気付いたのは、給料日のほんの少し前。
今月は何かと入り用だったから仕方ないと言えば仕方ないけど、これはもう大人の財布じゃない。
今のわたしより、アルバイトをしてる高校生の方が持ってる気がする。
もしかしたら小学生だってもっと持ってるかもしれない。
それくらい、財布の中身は寂しい感じだった。
お札は一枚も入ってなかった。
小銭を掻き集めれば千円くらいにはなるかもしれないけど、それでも寂しい中身には違いない。
何より財布の中身がそんな状態だった事に今頃気付く事に呆れる。
少なくてもこの状態は、一週間前からなってたはず。
なのに今頃気付くなんて、この歳になって何をしてるんだろうと、自分で自分のバカさ加減に呆れ返る。
実家に住んで、会社にはお弁当を作って持っていって、デートでは彌が全額出してくれる。
そんな生活をしてるお陰でお金を使う事が滅多になくて、財布の中を見る回数が少ない。
会社は電車通勤だけど、ICカードのチャージは月に一度にしていて、財布とは別で持ってるからこんな事になる。
今、たまたま炭酸飲料が飲みたくなったから買いにきて財布を見たけど、いつものように会社の給湯室にあるお茶で済ませようとしてたら、まだ当分は気付かなかったかもしれない。
「銀行、行かなきゃ……」
特に使う予定もないけど、入ってないと分かると不安になったから、帰りに銀行に行く事にした。
自分のバカさ加減にいよいよ気分まで悪くなってきて、炭酸飲料を飲んですっきりしようと自動販売機にお金を入れたタイミングで、ポケットに入れてあったスマホのメッセージ着信音が鳴った。
――今日、仕事早く終われそうだから飯食いに行こう。
ポケットからスマホを取り出しメッセージを開くと、彌からの今夜の誘い。
いいよ――と返事を打ちながら自動販売機のボタンを押して、スマホを再びポケットに仕舞ったわたしは、すぐに取り出し口からジュースを取り出した。
ただ取り出したそれは炭酸飲料ではなく、炭酸飲料の隣にあった、何故か春になったのにも拘らず撤収されていない、温かい「おしるこ」だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。