第九話

 side:ユキ

「魔力は使い方を誤れば死ぬこともあるんだよ。ここでは大丈夫かも知れないけど、人間界に降りたら確実に死ぬような使い方はしすぎないこと。わかった?」

「はい」

 私は今、イス様に怒られているところだ。でも禁止ではなく、しすぎたらダメなのは助かった。

「わかったならここでおしまいにしよう。それじゃあ、魔力の安全に圧縮する方法を教えよう。この魔道具を使えば、じゃない、あれどこいった?...ちょっと見当たらないから探してくるわ」

 魔道具ってなんだろう。道具に魔術を入れ込んだ物なのか。それとも魔法を入れ込んだ物なのか。

 それにしても魔道具があれば効率良く魔力が鍛えられそうだ。

「イスが戻ってくるまでは俺の番だな。実践はしないぜ。今回は座学だ。今回は一対一について説明するぞ」

 と言いながら黒板と椅子を持ってきた。

「アマ様はどこに行ったのでしょうか」

「アマはティスに叱られに行ったぜ。これに座りながら聞きな」

 おそらく、アマ様が何かやらかしたんだろうな。多分大切なことを伝え忘れたんだろうな。

「分かりました」

「今回は武器の相性を教えていくぞ。だいたいは実力が高い方が勝つが相性によっては実力差が少しあっても負けることも勝つこともあるからな。あと、ここでいう相性とは実力差がだいたい同じくらいのときだ。とりあえず、最初はユキの使っている刀からいくか。まずは基礎知識からだ。刀は斬ることに特化している。あと突き刺すこともできるな。だが、叩き潰すことは出来ないし、薙ぎ払うこともしにくい。そして、近接武器の中で中距離ぐらいだな。ま、基礎知識はだいたいこんなもんだな。刀を使いこなしたいなら本とかで見ておいてくれ、図書館にあるはずだからな。

「はい、わかりました」

 改めて聞いてみると刀って極端だな。切り裂くというのは圧倒的な魅力だが、欠点が大きいな。。それでも刀はかっこいい。だからこそ極めてみたい。

「次は刀と他の武器との相性だな。刀は一定の実力まで達さないとだいたいの武器に不利だな。一定の実力っつうのは素早い相手に刀を合わせられるか、鉄を斬れるか、だな」

 刀で鉄って斬れるのか?おそらく斬れるのだろう。

「イスがもう少しで帰ってきそうだから最後にするぜ。最後は手数の多さだな。つまり、扱える武器が多ければ多いほどいいってことだ。無論、技術は高くないといけないがな。これで座学は終わりだ。イスが帰ってくるまで鉄でも斬るか?」

 と言いながら厚さ五センチぐらいの鉄の塊を持ってくる。

「はい、斬りたいです」

「それじゃあ、コツみたいなものを伝えるぜ。って言っても難しものじゃない。視るだけだ。まぁ慣れたら簡単だ。それじゃあ、あとは」

 見る、か。いやこの場合は視る、か?まぁいいか。ものは試し斬ってみよう。

 斬ろうとするがキンッという音を立てて弾かれる。だが表面に少し傷がついた。何回か斬ろうとするが表面に傷が増えるだけだ。手がかりが一つでも見つかればいいと思ったけど難しそうだ。

 そのため、鉄の塊を持ち上げ観察をする。ぱっと見、脆そうな部分もないし、叩いたり、落としたりしても脆い部分は見つからなかった。そんなこんなで手がかりが一つもない状態で観察続けていたらイス様が戻ってきた。

 その後の魔力の圧縮はあまり身が入らなかった...。

 ま、体内でやっていた魔力の圧縮を魔道具内でするだけだから思ったよりも出来たんだけどね。


 ーーーーーーー

 あれから何年経ったのだろうか。おそらく数千年以上は経っているだろう。数えるのは数十年でやめたが。

 今の状態ならアマ様を除いたら多分戦いにはなるだろう。でも絶対に負けてしまう。あと二、三歩足りていない。この差はおそらく実力だけではないはずだ。それを知るためにホリテに行くことを決めた。

 そのため、魔物図鑑や地理などを図書館で読んだので大丈夫だと思っているが心配だ。忘れることは、ほぼなくなったが学んでないことは知らないからね。

「というわけでホリテに行きたいです」

「なるほどねぇ、わかったわ。貴方たちもそれでいいかしら?」

「私はしっかり知恵を伝えたから上手くやりなさいな」

「俺は伝えたいことは全部伝えたから大丈夫だぜ。」

「私も大丈夫ね。あとはあなた次第ね」

 と神様たちは言う。私は反対意見がないことにホッとした。だって及第点に達したということだからな。

「それならいいわ。それじゃあ、今からあなたを転生、いえ、転移させます。準備はいいですか?」

「はい」

 と言うと視界が白で包まれる。


 この数千年で肉体は強くなったけど精神は過ごした時間のわりに成長していないな。ここにきた時とあまり感性が変わっていないからかな?

 と考えていると視界が開けてきた。

 最初に目にしたのは木。あたり一体が木で囲まれていた。

「どこに転移するのか、聞いておけばよかったなぁ」

 と後悔しながら歩き出すのだった...






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