第38話

神代くんは涙を親指で拭い、頬を数回撫でた。




その手つきがあまりにも優しくて、どれだけ涙を止めようとしても止まらない。





「ごめん、意地悪だった」



眉を下げてそう言う神代くん。




「ない、て…っ、ばっか、で、ごめんね…っ」



ポロポロと流れる涙を止められないまま、震える声で神代くんに伝える。




「沙桐」



そうあたしを呼んで、布団を巻きつけたまま抱き上げる。




力が入らないあたしは、神代くんに横抱きにされる。




ぎゅっと力の篭った腕に安心して身を委ねる。




そうすると段々と眠むくなってきた。





「沙桐、おやすみ」




かすかに聞こえた神代くんの声が優しくて、溜まっていた涙がポロッと溢れるのを感じた瞬間意識はそこで途切れた。

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