あたためて

第20話

寝返りにより軋むベッドのスプリング。



彼の匂いのついた布団。



目の前にある大きな背中。





その大きな背中に触れたくなってそっと指を這わせようとする。



しかし、その指は彼の背中に触れることなく静かに布団の中に戻された。




この光景もこの感覚もこの行為も、幾度となく繰返し見てきた。




それこそもう見たくはないくらい。





あの頃はこの関係でも、いいのかもしれないなんて馬鹿なこと考えていたけど、あたしはもうあの頃のあたしじゃないから、だから。




決着を着けに来たのに。




また、苦しい思いをしなければいけなくなった。





あたしが望んでいたことなんて、些細なことじゃないの?



どうせ、捨てられるなら最初に身を引いたほうが傷つかなくてすむ。




そんな事すらあたしには許されなくて、



そのあたしの浅はかな考えは、あたし自身を酷く傷つけた。





痛い。





こんなに痛いなら、いっその事消えてなくなりたい。





涙で歪む彼の背中なんて、見飽きた。





最低なくせに甘やかして優しくする。



それに意味はないんだろうけど、単純で馬鹿なあたしは勘違いしそうになる。

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