第14話

「降ろしてください…っ」



必死になって話しかけても無視され、学校を出ても抱かれたまま。



恥ずかしいというより、何をされるんだろうという恐怖しか湧いてこない。



抱かれたまま駅まで連れて行かれ、そこでやっと降ろされる。



今しかない………っ



思い切って逃げようとすると、手を掴まれる。




「逃げきれねえんだから、無駄な抵抗すんな」




あたしのカバンからICカードを取り出し、自分のカードとあたしのカードを改札にかざす。



やっと振り返った神代くんはあたしに向かっていたずらする子供みたいに笑った。




「お前名前なんていうの?」



「………白北沙桐しらきたさぎりです」




もう、あたしに逃げ場なんてないんだ。




そう思うと、なんだか自分の無力さに嫌気が差してきてまた涙が出てくる。




スッとあたしの頬に神代くんの手が触れる。




そして、そのまま神代くんの方に顔を向かせられる。





「沙桐今日からよろしくな」




端正な彼の顔にはゾッとするくらい綺麗な笑みが刻まれていた。




怖くて、嫌で、逃げたくて。




でも、繋がれた手がそれを阻止する。





彼の握る強さは、それほど強いわけじゃないのに何故か解けなかった。

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