第11話
ギュスターヴは、暗い部屋の中で一人、運命を呪った。彼の心の底から湧き上がるその感情は、まるで凍てつく夜の風が彼を包み込むかのようだった。彼は自らの人生を振り返り、そこにある数々の努力や誠実さが、いかに無駄に思えてきたかを痛感していた。
「私は徳を積んできたはずだ。」その思いが、彼の胸を締め付ける。善意と誠実さをもって生きてきた自負が、今や彼をただの嘲笑の対象にしている。彼が選んだ道には、常に逆風が吹き荒れ、その吹き寄せる苦しみは、彼の心を蝕んでいく。
「どうして私だけが、こんなにも不幸に見舞われるのか?」彼の心の中には、疑問が渦巻いていた。愛したオルガの死、アデルとの間に生まれた奇形児、その悲しみは彼の心を引き裂き、無情に彼を孤独にさせた。彼の周囲には、彼を支えようとする人々がいたが、その愛情は彼の心に届かず、むしろ重荷に感じられた。
彼は詩を紡ぎ続けることが唯一の救いだったが、その言葉の中に宿る美しさが、彼にとってはなおさらの痛みとなった。彼の心の内にある感情を、彼はどうにかして文字にすることで解放しようとしていた。しかし、どんなに美しい言葉を並べても、彼の心に押し寄せる現実の波には抗えなかった。
「運命は私を見捨てたのか。」その思いが、彼の胸に深い傷を残す。彼は自らの運命を呪うことで、自身の痛みを外に放とうとしたが、そこにあるのは孤独な戦いだった。彼は自らの苦しみを誰にも知られたくなかったが、同時にその苦しみを理解してくれる人を求めていた。
彼の視線は、窓の外に向けられた。夜空には無数の星々が輝き、彼の心の中の闇を照らすように見えた。しかし、その光は彼には手の届かないもののように思え、むしろその存在が彼の孤独を際立たせるかのようだった。彼はその星々に向かって叫びたくなった。「どうして私の人生には、希望が見えないのか!」
ギュスターヴは、自らの運命を呪うことで一時の安堵を得ようとしていたが、その根底には、愛する者たちを守りたいという強い思いがあった。彼は、自分の苦しみを背負うことで、彼らの悲しみを軽くしたいと願っていた。しかし、その願いが叶うことはなく、逆に彼の心をさらに暗い深淵へと引き込むだけだった。
彼は思う。運命が自らに与えた試練は、彼が乗り越えられるものなのか、あるいは彼を打ちのめすためのものなのか。その答えが見えないまま、彼はただひたすらに自らの詩を紡ぎ続ける。言葉は彼の心の一部となり、彼の運命と共鳴し、同時に彼を深い孤独へと誘っていくのだった。
アデル 貴族の恋愛 原氷 @ryouyin
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