第16話
猫は待ってたに違いない。
ずっと、自分に触れてくれる温もりを。
抱き締めてくれる存在を。
何も知らなくても本能がある。
だから寒さに疲れ果てた猫はやがて気づくのだ。
自分が一人ぼっちであることを。待てども待てども抱き締めてくれる存在なんか無いと。芽吹いたばかりの本能で絶望を知る。それでも無垢な猫は恨むことを知らずに怯えることしか出来ないのだ。
寒さに。雨に。人間に。その証拠に、雨が降った日なんかは僕の傍から片時も離れなかった。
彼女は僕と猫を息もせずに見つめている。
無感情な瞳の奥にどんな色を隠しているのかは知らないが、不思議と嫌な気はしなかった。だから猫の喉を撫でながら「抱っこしてみる?」と、彼女を見つめる。
彼女はパッと顔を上げた。
「…いいの?」
「いいよ。こいつも君に抱っこしてもらいたいみたいだし」
「……、」
腕から腕へ猫を渡そうとすると、彼女は返事の代わりにそっと腕を出した。まるで壊れモノでも扱うかのように猫を抱き、やがて猫が怖がってないと分かると、おずおずと喉元に手を滑り込ませる。
最初はゆっくりと。慎重に。ゴロゴロと猫が目を細めると、彼女はようやく肩の力を抜いたようだった。
「もっとちゃんと撫でても大丈夫だよ」
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