竹筒じゃないんかい!!
人生なんて短いもので。あっという間に時間は過ぎていく。今日が始まったと思っても、すぐに日は暮れて、気づけば布団の中で明日を待っている。
その限りある時間の中で、どのくらいの経験を積めるだろう。経験値は多いに越したことはない。話をしていて面白い人は、圧倒的にいろいろなことを経験している。人に話せるだけの経験を持っている。
過ぎた時間を見返したときに人に話せる経験がいくつあるか。ただ積み重ねた時間の話をしても、人の心には響かない。そこにその人が経験した何かがあるから、話を聞いた人の心は動かされるんじゃないだろうか。
……と、哲学チックな出だしになってしまいましたが、先日経験したお話を一つ。たぶん、この経験は自分の中で激レアクラス。もう経験することはできないんじゃないだろうか。そんな偶然が偶然を呼んだ話。
車で出かけていた私達親子。運転席に私、後部座席に子。車内では、どうでもいい内容の話をベラベラ。たしか、この日は国民的アニメキャラの家の間取りについて話していた。
「あの家、平屋だけどデカいよね! 部屋数も多いし、意外と敷地あると思うんだよね」
「あー、それ分かるわ。廊下も長いじゃん。縁側も庭もあるしさー」
「隣のお宅よりもデカそうだよね。あれ? お風呂場は台所の先じゃなかった?」
「あー、そうだったかも! 台所を通ってお風呂に行ってたような気がする! てかさ、そんなこと言うから、間取り気になってきちゃったじゃん。家帰ったらさ、間取り図書こうよ」
「だね! これは、気になるわ」
気になることは何であれ、解決させないと気持ちが悪い親子。笑ってしまうくらい、変なところばかり よく似ている。
信号が赤になり、停車。隣に並んだ車を見て、「うちの車洗ってる?」と子が嫌味を言う。2週間前に洗車したが、朝の冷え込みにより、降りる霜。そして、溶けては凍りを繰り返し、車は水滴まみれに……。
「隣の車を見習って綺麗にしたほうがいいよ!」
「だから、洗ったって! 2週間前に!」
ここで、私は運転席の方に目が止まる。あれは……木の水筒か? 令和の時代に竹筒型の水筒を使っているのか!? え、どこで売って──
「……尺八じゃねぇか!!」
私のツッコミに飛び跳ねる子。そして、運転席の方に目をやれば、赤信号の停車中に尺八を吹いている。楽譜らしき紙も見えたから、譜面を見ながら吹いていたみたいだ。もしかしたら、大事な演奏を控えていたのかもしれない。
「え、え、尺八!? 吹いてる人、初めて生で見た!」
「いやいや! そこじゃないでしょ!」
どこかズレている我が子。
「貴重な体験したね!」
「宝くじ当てるより難しいかもね!」
「それな!」
ありがたい経験をまた一つ積ませていただきました。尺八の方にも、幸がありますように。
人生って、いろんなことがあるから、面白い。
自分だけの経験を増やして、中身の濃い人間になって、年齢を重ねるたび、【面白い人】になっていきたいな。
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