第96話

壊れる家から燃える木片が落ちてきたのだ。



それを思い出した途端、それがぶつかった頭がじんじんと痛み出す。



「頭を打って倒れたわけか。」



「それに肩の火傷もな。後で診るさかい、今は我慢し。」



「はーい。」



なるほど、肩のじくじくした痛みは火傷か。



倒れた人間を背負うのは大変だっただろう。



改めて斉藤に感謝を伝えると、彼は迷惑そうな表情を隠すこともなく一つ頷いただけだった。



隠れるように息を吐いた時、蝶はあることに気づいた。



「山崎さん!」



「んー?」



「街は…!?」



「ああ…街は…」



そこまで言うと、山崎は少し顔を曇らせて後ろを見やった。



その視線に続いて、蝶は後ろを振り返る。



「っ」



真っ暗な夜。



その中の赤い炎がよく映えていた。



「火がな、大き過ぎたんや…。」



「…。」



赤い光に照らされた蝶の瞳が、大きく揺らいだ。



「とりあえず、新撰組は撤退や。ええな?」







落ち延びる長州兵の放った火の手によって、京の街は炎に包まれた。

後に「どんどん焼け」と言われるこの大火は、三日間、京を燃やし続けたのだった。

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