第94話

***


ザクッ


「なっ!?」



目の前に刀を構えた敵が、血生臭い地面へ倒れた。



己の手にある刃は一切動かしていない。



その兵の胸に刺さっていたのは。



「…苦無?」



「副長。」



やはり。



その苦無の持ち主…山崎は、土方の背後に潜んでいた。



「喧嘩に横槍入れてしもたな。堪忍。」



「いや、いい。それより他の連中はどうした。」



キンッと刀を構え直しながら、土方は背後に尋ねる。



「数人は戦場に、他は街の救助に回した。そちらさんは?」



「負傷兵はいるが、もう殆ど片付いた。近藤さんも無事だしな。」



「ほんなら、俺は副長について行こかな。」



「好きにしろ。」





元治元年 七月 十九日


御所へ向かった長州兵は薩摩兵の参戦により総崩れとなる。


長州藩の敗北で、この戦いー後世で禁門の変と呼ばれる事件ーは終わりを迎えた。


その後、御所への発砲により長州藩は”朝敵”となった。

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