第73話

どぉん…どぉん…



走る蝶の耳に、地鳴りの様な低い音が聞こえてきた。



足元の石ころがカタカタと揺れている。



「…始まったか。」



予想以上に早かった開戦に、思わず言葉が零れる。



土方への報告を終えた彼女は、山崎との合流を図る為に他の潜伏先へ回るはずだったのだ。



しかし、戦が始まってしまった以上、このまま進めば戦の混乱に巻き込まれてしまう可能性が高い。



さて、どうするべきか…。






「…っ!!」




瞬間的な勘で、体を翻した。



次の瞬間。


何かが肩を掠める。



ダダダッ



次に聞こえたのは、背後の木に何かが刺さる音。



木の幹に深々と刺さるのは、己の武器と同じもの。



「…何者だ。」



咄嗟に構えた姿勢を崩さずに、苦無が飛んできた方向を睨む。



「避けたか。なかなかの手練れとお見受けする。」



静かな木々から響いてきたのは、低い声。



「こちら側では無い。という事は、幕府側の忍びか。まだ、幕府にこんな切れ者が眠っていたとは。」



「残念ながら、味方では無さそうだね。」

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