第53話

***


「副長。」



「入れ。」



すっと、副長室の襖を開けたのは、山崎だった。



「どうだった。」



「なーんにも動じてませんよって。えらい肝の座った女子やなぁ。」



音も立てずに襖を閉めると、疲れたように首をコキコキ鳴らしながら、彼は土方の前に腰を下ろす。



それを横目で見ながら、土方も筆を持つ手を止めた。



「お前が忍び者だと伝えたか?」



「言ったで。せやけど、ほとんど無反応。」



「何か探れるかと思ったんだが…。」



「あ、一つ。気になることがな。」



「なんだ?」



声を抑えて尋ねる土方に、にいっと口許を吊り上げると、山崎は自慢げに己の成果を話し出す。



「えらく上等な苦無持ってるんや、それも一本だけ。手元に花の文様が入っとってな、綺麗やったわぁ。見せてもろたら、小さく傷が入っとった。」



「戦いの形跡か?」



「その可能性があるな。結構使い込んであったと思う。ま、それ使うたんがあの女子かは分からんな。」



「その事については、他に何か言ってたか?」



「知人に貰ったんやって言ってたな、それ以外は何も。まあ、どこまで本当かは分からんけど。」

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