第28話

先程の山崎の足音と、静かな夜を裂く金属音がその場所を知らせてくれた。



"池田屋"



確かにそう書かれたその建物は、旅館のようだった。



既に血で染まったそこには、見覚えのある隊士達が何人もいる。



「やあぁー!」



逃げてきた残党が、蝶を襲う。



ザシュッ



忍ばせていた小太刀で仕留めると、蝶は再び駆け出した。



中を覗くと、まだ刀を振り続ける男達がいた。



その時、



「平助えぇぇ!!」



誰かが、誰かの名前を叫ぶ。



反射的に、蝶はその声の主へ足を進める。



途中に襲いかかってくる輩を殴り倒しつつ、そこへたどり着くと、一人の男が額から血を流して倒れていた。



「っ、傷が…!」



かがみ込むと、男の額がぱっくりと割れていることが分かった。



このままでは、血を失いすぎる。



そう思うが早いか、蝶は自分の着物を割くと、額へ巻き付ける。



「しっかりしろ…!」

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