参
第28話
先程の山崎の足音と、静かな夜を裂く金属音がその場所を知らせてくれた。
"池田屋"
確かにそう書かれたその建物は、旅館のようだった。
既に血で染まったそこには、見覚えのある隊士達が何人もいる。
「やあぁー!」
逃げてきた残党が、蝶を襲う。
ザシュッ
忍ばせていた小太刀で仕留めると、蝶は再び駆け出した。
中を覗くと、まだ刀を振り続ける男達がいた。
その時、
「平助えぇぇ!!」
誰かが、誰かの名前を叫ぶ。
反射的に、蝶はその声の主へ足を進める。
途中に襲いかかってくる輩を殴り倒しつつ、そこへたどり着くと、一人の男が額から血を流して倒れていた。
「っ、傷が…!」
かがみ込むと、男の額がぱっくりと割れていることが分かった。
このままでは、血を失いすぎる。
そう思うが早いか、蝶は自分の着物を割くと、額へ巻き付ける。
「しっかりしろ…!」
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