第26話

***



「山南さん!」



今度は、蝶にもはっきり聞こえた。



隊士達が出ていってから、一刻ほどが経つ。



戻って来る気配はなく、山南もそれを承知のようだった。



「声を落として、山崎くん…なんです?」



「本命が、…た。…屋や。」



「っ!」



一枚板を隔てても、山南が息を飲んだのが分かった。



交わされる言葉の端々から、緊張が伝わる。



「すぐに知らせてくださいっ。近藤さんは、どんな状況に?」



「交戦中、負傷者も出ているみたいやった。こんままやと…」



「…分かりました。伝達を頼みます。」



「承知。」



声を落として、と言った山南さえも焦ったように声を荒らげる。



山崎、と呼ばれた男は山南の言葉を受けて、暗闇へと再び走っていった。



「近藤さん、土方くん…」



蝶がいることも忘れたように、山南は声を漏らす。



一方、蝶はそれを聞きながら、頭を高速回転させていた。

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