第19話
「怖くなったら逃げちゃいますよ。」
「いいよ。アンタが幸せなら追わない。」
「ヤクザなのに!」
「関係ない。惚れたから幸せにしてやりたい。でも俺じゃあ無理だから見届けたい。
それだけ。いいんじゃね?
悪いこといっぱいしてきたから罪滅ぼし。
ひとつくらい良いことしてもバチは当たらない。」
どうしてもうこの人は。欲しいようで欲しくない予想外の言葉ばかり吐き出すのか!
もう!号泣するしかないじゃない。
「日向さんの馬鹿ぁ!」
わんわん泣き出した私に連られてて岬まで泣き出した。
「おいおい!泣くなよ。何が気に入らない?」
泣き声に慌てて日向さんが焦ってる。
「…日向さん。」
あきれた声で運転手さんが声をかけてきた。
「野々村、見てないでなんとか泣き止ますの手伝え!」
「俺じゃあ無理っす。」
「お前なあ、やってから言えよ。」
「泣き止ますのなんて簡単ですよ。
『愛してるから黙って付いてこい』って抱き締めりゃいいだけなのに。ぐずぐずと面倒くさい。」
「…あ゛?」
「日向さんがヤクザだと聞いたのに態度が変わらないんですからイイじゃないですか。しつこく5年も片思いしてたんでしょ。別にヤクザだからって好きな女には優しいんだし。取って食う訳じゃ無いんだから。」
「5年も片思いって…」
「やだな。皆知ってますよ。当然でしょ。
小田切組動かしてこんなところに保養所を作る手続き取って。ここの端っこを高速が走ることになったから土地売れましたけど、でなきゃ丸損でしたよ。」
「加賀さんは『それくらいは見越してたんだろ』って笑いましたけど
天城さんなんて悪魔みたいな顔で『採算とれなかったら小田切に売り飛ばしてやった』って笑ってたんですから。それを葉崎さんが面白おかしく言いふらしてたんす。
あのクリオネが…」
「いい!言うな。魘される。」
私は岬を抱き締めながら二人の会話を聞いていて…涙はいつの間にか消えていた。
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