第18話
『やっぱり警察官じゃ無きゃ無理か。』
半分諦めを含んだ声で日向さんに言われてツキンと胸が痛んだ。日向さんを信用したのは もちろん警察官の肩書きが有ったからで(誤解だったけど)もし初めからヤクザだと知ってたらどうだったろう。
曇りの無い目で真っ直ぐに日向さんと向き合ってたろうか。
でも、今は満身創痍で岬を抱えて…
逃げ込む場所が喉から手が出るほど欲しいのも事実。
岬の将来を考えれば関わるべきでは無く。
でも今の私達には日向さんの申し出はとても有り難い訳で。ぐるぐると頭を色々な考えが巡って、
岬を抱き上げてあれこれ思案していると
「ぷっ。顔面百面相だな。」
日向さんに笑われた。
「大丈夫。ほとぼりがさめたら新天地を探せばいい。俺の家は提供するが俺は同居する訳じゃ無いから。」
「え?」
「行くところ無いんだろ?岬を抱えて働くのも難しい。それくらいは想像つく。」
「…はい。」
「だから次に進む道が決まるまで俺の家に住め。空いてるから。」
空いてるからって。
「私達がそこに住んだら日向さんは何処に住むんですか!」
「別のねぐらに。幾つか寝る場所はあるし。」
「でも。」
「心配しなくても家賃は払うから。」
いやいやいや。それはまた別の意味で怖い。
「『ただほど怖いものはない。』お祖母ちゃんの口癖です。」
私の言葉にキョトンとした顔になった日向さんはゲラゲラと笑いだした。
「なるほど。確かにな。じゃあ出世払い。生活が安定したら負担の無い範囲で返金してくれたらいい。心配なら念書でも交わすか?」
「…日向さん。あまりにも親切過ぎます!」
私が岬を抱き直して逆ギレ状態で叫ぶと、
「そうか?けど5年前にアンタを行かせて後悔したから。今度はちゃんと幸せになるのを見届けたい。それだけなんだがな。」
日向さんは優しい目で私を見る。
なんだか泣けてきちゃう。
「…狡いです。」
「うん。ヤクザだもん。人の弱味に漬け込むし。そんなの得意。」
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