第10話

「送る。」


言われて乗せられた車は白い国産車。いわゆるハイブリット車。

東雲の古い校舎。もう来れないかもと思い、もう一度体育館の入り口で振り向いた。


「…あれ?」


なんか違和感。首をかしげた私に日向さんが声をかける。


「どうした?」


「あ!いえ。」


私はあわてて日向さんの車に乗り込んだ。


「で?何処に送るんだ?」


「あ。最寄り駅で。このまま京都に帰るから。」


「京都から来たのか。大変だな。」


私は緩く首を振る。日向さんだって管轄外なのに態々愛を探してくれてる癖に。


「私、秋にはアメリカに渡るんです。

彼氏と結婚してオレゴン州で暮らすんですよ。まだ若いって反対されてたんですけど。1年がかりでやっと許可してくれたんです。」


出来ればそれまでに愛を見つけて結婚式に招待したかったんだけど。もう座席表も招待状も発注したし、彼の出席者とのバランスや料金の事もあって今からの追加は難しい。それでもウエディングドレスは愛に見て欲しかったなぁ。


「へえ、そりゃあ目出度い。」


「ありがとうございます。」


「相手は外人さんか。」


「いえ。日本の商社マンですよ。向こうに支社が有って3年の約束で赴任するんです。」


ちなみに彼は大学で同じゼミの先輩だったりする。私の話に日向さんは『せっかく知り合えたのに残念だな』と笑った。

嬉しいけど


「日向さんならモテモテでしょう?」


可愛いけど格好いいイケメン。性格もいい。ちょっと小柄だけど背を気にする女の子ばっかりじゃないし。警察官はちょっと危ないかも知れないけど何より公務員。安定の職業だ。


「なんか激しく誤解されてる気がする。

確かにモテはするけど。アンタみたいな面白い女の子に会ったの初めてだしなぁ。」


面白い女の子?それって褒めてんのかな。


「私なんて平凡を絵に描いた女ですよ。」


日向さんに比べたら平々凡々って感じ。

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