遠い日の約束。

第1話

「約束って…こんなになってても有効なのかな。」


私が訪れたのは山里の小さな小学校。

と言っても児童数の減少から既に廃校になって10年あまり。

元小学校を売りにした民宿として再利用されたりしたものの、あまり評判が良くなくて3年前から放置されてる物件らしい。

ほら、廃墟って奴。

今は丁度お盆だし。肝試しに来る変わり者も何人かいると聞いた。

まあ、まだ昼の1時だし。

いくらお盆でもお化けだって就業前で寝てるだろう。


「約束は体育館の大きな鏡の前。」


確か近所の理髪店を経営してるOBが寄付したんだっけ。

私は壁に掛けられた『富士原理髪店』の文字を確認して微笑んだ。

そうそう。ここの息子さん、私達の2年先輩で中学に入ってグレて不良になったって聞いたな。

不良って漠然としてるよね。

タバコ吸ったりとか制服改造したりとか、学校サボったりとか集団でつるんだりとか?

どこら辺りから不良なんだろうかな。

なんて。富士原理髪店と書かれた鏡の枠を触りながら考えた。

この学校に4年生まで通った私は12年前の4月に父の転勤で京都に引っ越した。

その時仲の良かった親友の

森谷愛もりやあいと二十歳になったらここで再会しようと約束したのだ。

でも、18才になった年に愛は蒸発してしまった。

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