鑑
第19話
「・・・・気になる?」
「え?」
黙々と作業していた私に、狭い厨房の入り口に凭れた茜からの問い掛け。
「あっち」
顎で外を示されて、言いたい事を理解する。
「気にならないわけじゃないけど・・・帝が話さないってことは、私に聞かれたくないことなんだろうから」
帝の急な要望に、その意図に気付いて席を外した。
余りに不自然過ぎたから、思い出すと少し笑えてくる。
「チームのことは私には口出しする権利ないし、私が関係したとしても、帝がトップだもの」
力とカリスマ性が全ての世界で、チームのトップが絶対。
恋人だからと軽々しく口を挟んで良いことではないと思うし、私は “総長の女” になったのではなく、“帝の恋人” になっただけで、ほとんど無関係と言ってもいい。
そんな人間に、分かったような口を利かれれて、決定を左右されては下の人たちにも失礼だと思う。
何より、そんな事をしてはトップとしての示しが付かない。
総長だから好きになったんじゃないけど、
皆が憧れ、誇りとする、総長である帝も好きだから、
私は、帝の邪魔はしたくない。
チームを誇りに思う帝も、私が好きな帝の一部。
「私が知るべきことなら、きちんと話してくれる
微笑で答える私に、茜は溜息を返す。
「威張り散らす女になるとは思ってなかったけど・・・。“皇妃” の自覚さえなしか。リイらしいわ」
「・・・・」
「・・・・何よ?」
「ううん」
自然に呼ばれた名前に、少しの違和感とくすぐったさを憶える。
素っ気無い反応の茜も照れているのか、頬が僅かに赤い。
「茜」
「ん?」
「これからも、親友でいてね」
恥ずかしかったけど、どうしても言って於きたかった。
「な、何はずいこと言ってんのよ。バカ」
「フフッ。何となく」
益々照れる茜に、私は笑みを深くする。
「~~~~っ。手伝う!」
「え?」
「料理よ」
「・・・・・・茜が?」
照れ隠しの茜の申し出に、若干頬が引き攣る。
「何?文句でもあんの?」
かつて、一度だけ茜が料理をしようとした現場に立ち会ったことがある。
包丁を持てば、包丁の刃が折れるか、まな板を壊す。
火を使えば、火事寸前。
できる料理は黒一色。
茜は、料理との相性が凄まじく悪かった。
「じゃ、じゃあ、レタス千切って」
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