第18話

「彼女が傷付くと分かっていて、いたずらに事実を告げることでもないでしょう」


 遣る瀬無さそうな顔は、多分俺たち全員同じ。


「俺、リィを泣かせたくねぇ」


「・・・だな」


 一気に酒を煽って宣言する大樹に、俺たちも頷きで返す。


 売春でさえことは重大だってのに、ドラッグにまで手を出していると知れば、秋月が今以上に悔やむのは目に見えていた。


 苦味の増した煙を吐き出し、背凭れに頭を預けて天井を見上げる。


「正木も噛んでるようだが、連絡は?」


 メンバーの報告にでてきた、意外な人物を思い出し、反射的に眉を寄せる。


「まだありません」


「俺、あの人苦手なんだよなぁ」


「俺もー」


「大樹は兎も角、お前の場合、同属嫌悪だろ」


 正木 烈。連合四神の一を担う、白虎の総長。


 飄々として掴み処のない遊び人で、何処か統馬と似通ったところがある。


「失礼な。俺はあの人よりも女の子に誠実だよ」


「どの口がほざいてんだ。一遍背中刺されてこい」


「まぁ、実際。このところ女遊びは落ち着いたようですよ」


「ね?」


 零獅のフォローに自慢気に小首を傾げるが、はっきり言って気持ち悪いだけだ。


「やめろよ、統馬。キモイ」


 バカ正直な大樹の感想に、統馬のヘッドロックが掛かる。


「じゃれあいはその辺にして、結局ルナには黙っておくの?」


 自分用のグラスを持って戻ってきた凛太郎さんが、帝に訊ねる。


「まだ、いいだろう。あの女は、こっちで始末する」


「どの道、あの女はナイトメアに関係している可能性が強い、敵側の人間ですからね」


 あれは、皇妃を傷付ける害虫だ。


「一応言っとくけど、ルナは基本的に暴力は好きじゃないよ」


「んなこた、てめぇに言われねぇでも分かってる」


 暴力に対する実力行使を躊躇いはしないが、根本的に秋月は人に甘い。


「ヤりようは幾らでもある。後は、女次第だ」


「まだ、何かしでかしてると?」


 笑みを変えた凛太郎さんと同じく、俺たちも帝を見る。


「売りで満足する女には見えなかったからな・・・・。勘だ」


 帝の勘はよく当る。


「正木呼んどけ。2~3日中に顔見せろってな」


 灰を落とした煙草を零獅に向けて指示を出す。


「分かりました」


 1日の猶予を貰った零獅は、すぐに電話を掛け始める。

 言外に、白虎以上の情報を集めろと。

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