第17話

その日の夕方、コッペリア特別レッスンがあった。カリンは、ちゃんと表情の練習をしてきていた





努力してきた生徒に、先生として、褒めないといけないと思い、話しかけた





「カリンちゃん、表情、良かったよ?」




「...100点の出来ではないです。先生の言う通り、バレエ以外のことに目を向けてみました。バレエの漫画を読んだんです。




そしたら、主人公が有名なバレエ団の映像を見て表情を真似していたので、私もやってみましたが、私はそれでは満足いきません





そんなんじゃなくて、自分でスワニルダの性格を掴みたい」





「そっか......」





「私は、真穂先生が踊ったオーロラ姫のように踊りたいんです!」





「え?私?」





「私は、先生が20周年の眠れる森の主役を踊っているのを見て、バレエを始めたんです」





「それは、ありがとう」




「今の私では、スワニルダなんて務まらないと思うんです。あの時の真穂先生のように主役を踊れないと思うんです」




「カリンちゃんは上手いよ?そんな風に思わないで」






「なんで真穂先生は踊らないんですか?」






カリンから言われた言葉は、私の心に突き刺さった






「私は...留学先で事故に遭ったの。だから、もう踊れないよ。カリンちゃんみたいにはもう、踊れない」





「知ってます。でも、本当に踊れない身体なんですか?」





「う、うん。だから、もう、教えに徹しようと思ってるのよ。だから......」




「わたしには、先生はまだ踊れるように見えます。教えてくれるときの動きも本当に綺麗だし。実は踊れるんじゃないですか?」




カリンの厳しい追及に、困ってしまった




「カリンちゃん、気持ちは嬉しいんだけどね.......私はもう、踊らないの」




「私は、何かから逃げてる人に、教えてもらいたくありません」





カリンはそう言い捨てると走って去って行った。





「気づかれてしまってるわね、カリンには」




「彩子先生...」





彩子先生が突然現れて、驚いた





「治ってるのよね、脚は」




「.....はい」




「心の傷が治らないのよね」





私は思わず、目が潤んでしまった





あの時、祥太を傷つけて、夢を選んだ私を





バレエの神様が怒っているような気がして





踊るのが怖いのだ......

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