2ーおまけ② 疎まれる

 ルナは、兄である俺から見て、カチュアとエドナの嬢ちゃんのように、人を疑わない、お人好しの子だった。今でもお人好しだけど。


 いつからだろう。まだ幼い年頃なのに、人の闇を見るようになったのは?




【ルナ十歳。学生時代】


 帝都にある魔術学園。


 ルナが廊下ろうかを歩いていると。


「なあ、知っているか? アルヴスという男を?」

「ああ、何となく知っている。八騎将の側近そっきんだろ? 話題になっていたな」


 アルヴスの名前を聞いたルナは、廊下でアルヴスの話をしていた二人の男の子から隠れて、様子をうかがった。


(見る限る、貴族の子見たいですね)


「でも、そいつがどうしたんだ?」

「そいつ、何者だと思う? なんと、平民だよ、へ・い・み・ん」

「わぁ! マジかよ。話題になっていたから、どんなに凄い人かと思ったら平民かよ。その八騎将は見る目がないな」

「だろ? 貴族のたしなみを知らない平民が、何の苦労もせずに八騎将の側近になったんだぜ。許せねえよな?」

「本当だぜ」

「後、そのアルヴスとかいう奴、勇能力を所持していないんだぜ」

「マジかよ! 何の力もないのに、出世しやがったのかよ?」

「本当だよ。この魔術学院は平民も入学できるせいで、俺らは平民と一緒の空間で学ばないといけないんだぜ。そんな品の欠片もねぇ連中と一緒にいることに我慢しているのに、ひでえよな、そのアルヴスは」

「なんか、そいつの名前を言っていたら、口が臭くなりそうだ。貴族の俺らが臭くなったら、品が失われてしまうな」

「お前、言えているな! 本当に、あの平民は、どんな手を使って、出世したんだが。俺ら貴族は正々堂々と出世しているのにな」

「全くだな」

「「はぁ! はははははははははは!!」」


 二人の笑い声が廊下内に響き渡った。


「……」


 ルナは黙々もくもくと貴族の二人に見つからないように、その場から去っていった。




【ルナの家】


 魔術学院の講義を終え、家に帰るルナ。


「……ただいま」


 ルナは家のドアを開けて中に入っていた。


「ルナじゃないか?」

「兄様?」


 そこには、アルヴスが出迎えてくれた。


「珍しいですね。帰って来るなんて」

「シグマ様に、無理やり休暇を入れてくれたんだ。それも、明日から三日間も」

「……そうですか。……あの~兄様」

「何だ?」

「……無理をしないで下さいね」

「急にどうした? らしくないな」

「本当に何もないです」


 ルナは駆け足で、自分の部屋へ向かって行った。


「変なルナだな」




 ルナは自分の部屋のベットの上へ飛び込んでいった。


(兄様は、兄様なりに頑張っていたはずなのに、どうして、あんな陰口かげぐちを言われないといけないんですか? 兄様のこと何も知らないくせに!)

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