1-18 別れ。そして、旅立ち

 戦いから数時間後。


 戦いで疲れたカチュアは、一休みをしたことによって動けるようになった。


 そして、彼女達はというと。




【ライム村】


「あの……ありがとう、ございます。村の皆の、埋葬まいそうを手伝ってくれて。疲れているのに、申し訳ないです」


 カチュア達の、目の前には無数のお墓が立っていた。


 これは、ヴァルダンの襲撃でなくなった村人とヴァルダンの兵達のお墓だ。


 あれから、カチュアとエドナは協力して、亡くなった者全員の埋葬をしていた。


 お墓一つ一つに名前は書かれておらず、一つの墓石に亡くなった村人全員の名前が刻まれていた。


(本来なら一人、一人のお墓に名前を刻んで置きたいところだったけど、そのためには、エドナに遺体を見せて身元を確認させなければならない。ヴァルダンの連中の行為は、あまりにも非道だ。遺体の中には、原型を留めていないものもあった。遺体とはいえ、そんな無惨むざんな姿を彼女には見せられなかった)


「いいのよ~。それよりも、エドナちゃんこそ、だいじょぶ? 辛くないかしら〜?」


 エドナの目には涙を流ながれてはいたものの、笑顔で。


「今でも、大泣きしたいんだよ。でも、あたしは、元気が取り柄なんだよ。皆のためにも、元気でいないと、いけないんだよ」


 元気よく、ガッツポーズを取る。それを見たカチュアは笑顔を見せた。


「でも、無理はしないでね~。……!」


 笑顔だったカチュアの顔が再びに笑顔が崩れたんだよ。


「どうしたんですか?」

「……何かこっちに向かってくるわ~」

「え!? もしかして、まだヴァルダンの方々ですか?」

「わからないわ~。この足音の大きさだと、大軍だと思うわ~。そうなると、村に長くいるのは危険ね~。早くここから離れないとだわ~」

「あの~。カチュアさんと、一緒にいて、いいですか? あたし帰るところがなくなっちゃったから……」

「それは、もちろんよ~。七年間、今まで一人旅だったから、旅の友達が増えて嬉しいわよ~」

「ありがとうなんだよ。取り敢えず、近くの街まで行きませんか? あ! 街までの道が分からないんだよ」

「それなんだけど……」


 カチュアは一枚の紙きれを出した。


「さっき、村の皆さんの遺体を運ぶ途中で、地図を見つけたわ~。ナギちゃんに言われて拾ったのよ~」

『いや、村から出るなら、必要だろ?』

「この近くにあるのは……」


 エドナは地図を眺めた。


「地図読めるの?」

「村長さんに教えてもらったんだよ」

「凄いわ~。わたし、地図は読めないのよ~」


(だろうね。地図を見つけた時、「何かしら~これ?」って言ったぐらいだからね)


「あたしに任せて! 時々、地図見ても迷子になることもあるんだよ。」


(大丈夫なのか、それ?)


 エドナは、ガン見しながら地図を読む。


「ん~。このアウルというところが一番近い街見たいなんだよ」

「よーし~。そうと決まれば出発よ~」

『「出発よ~」じゃねえよ! その前に、旅の準備だろ?』

「あ! いけないわ~。旅に準備は必須だったわ~。街まで行く準備しないとだわ~」

「分かったんだよ。あたし、自分の家に必要な物を取りに行きます」

「なるべく急いでね~。出入口で待っているから~」

「うん」


 エドナは、すぐに自分の家まで走っていった。




 しばらくして。


「お待たせなんだよ!」


 旅の準備を終え、バックを背負ったエドナは、村の出入り口まで走って向かって行った。出入り口前にはカチュアが待っていた。


「もう、いいのかしら~?」

「はいなんだよ」

「それじゃあ~、行きましょーか~」

「あの~、大丈夫ですか?」

「何が?」

「カチュアさん、あまり休んでいないから」

「今は、ここから離れましょう~。後のことは、それからだわ~」

「あ! はい、なんだよ! あ! カチュアさん、これから、よろしくお願いします」


 エドナはお辞儀をした。


「あ! ナギさんもいたんですね! ナギさんもよろしくなんだよ!」

『あ! ええとぉ……よろしくお願いします』

「こちらこそ。あ、ナギちゃんも、よろしくっだって」

「はい! よろしくなんだよ!」


 エドナは、この場にいないナギに対してお辞儀をした。


 二人は村から出て行った。


 村が見えなくなるまで、エドナは村を見ながら歩いていった。


「村の皆さん、行ってきます!」




第一章  蒼髪の少女 完

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