1-11 獲物が逃げる原因は?

【ユグルの森】


 荒々しいやり方だったが、なんとか大物を捕らえられたカチュア達は、引き続き狩りを継続することに。


「あ! デブボアを発見なんだよ! よーし」


 デブボアと呼ばれる猪型の危険種を見つけと、エドナは筒から矢を取り出そうと、すると。


(エドナは弓が得意のようだが、矢を引く時に、そのデケェちちが邪魔にならないだろうか? それを言ったら、カチュアも剣が得意らしいけど、やっぱり、あのデケェ乳が邪魔にならないのか? ……今は、胸の話をしている場合じゃなかった。全く! この二人を見ていると、妙にデケェ乳のことで頭の中が埋め尽くされてしまう! コンチクショウ!!)


 カチュア達は、デブボアに見つからないために、しげみに隠れている。


 しかし。


「あ! まただよ! もう! 何で、隠れているのに、逃げていくの!?」


 隠れているにも関わらず、デブボアはカチュア達が隠れている茂みの方角を見ると、怯えたように逃げていった。


 さっきから、カチュア達は、隠れているはずなのにデブボアを見つけては逃げられてしまっている。



「逃げられたならしょうがないわ~。また、探してあげるわ~」

「はうう。カチュアさん。お願いします」


 カチュアは聴力が良く、かなり離れているところから音を拾うことが出来る。それを頼りに獲物を探していると、必ずデブボアを発見することができていた。


(それにして、なんでカチュアの中にいるのに、カチュアが聞こえている音を共有できないの? 不思議なんですけど。そもそも、カチュアの中にいるという考え方が間違っているの?)


 獲物を見つけるところまでは、よかった。しかし、二人は獲物が見つからないよう茂みなどに隠れているが、先程のようにすぐに逃げられてしまう。


 二人は隠れているが、で獲物が逃げてしまうことは、二人は全く気づいていない。


 確かに、カチュア達は隠れているから、デブボア視点、カチュア達は見えていないはずだ。……は。


「あ! 遠くにいますけど、デブボア発見したんだよ!」


 また、次なる獲物を発見したみたいだ。


「今度こそ、エドナちゃんの弓の腕前、見てみたいわ~」

「よーし、任せるんだよ!」


 エドナが弓を引き、デブボアに気がつかれないよ近づく。しかし……。


「ブ! ブフィィィィィィィ!!」


 デブボアは、おびえるようにその場から去って行った。


「あれ? また逃げちゃったんだよ! なんで? さっきから、この調子で逃げられるんだよ! どうしてなの!?」


(うん、逃げられるのは当然だけど。もう、十回も逃げられているよ。……と言うか。いいかげん気づきましょうよ、お二人さん。普通気づきますよ)


「さっきから、デブボア逃げていくわね〜」

「はうう……。このままでは、あたしは一匹も狩れずに日が暮れちゃうんだよ!」

「そーね~~。どーすればいいのかした~?」


(そろそろ口だした方がいいのかな? ……でもな~。指摘した方がいいのか? うーん……聞いてきたらでいいかな?)


「そーだわ〜。ねぇ、ナギちゃん。わたし達、さっきから猪さんに逃げられているわ~。どーしてだが、わかるかしら〜?」

『早速、聞いてきてくれたか……。出来れば自力? で気づいてほしかったが。同じ光景を見るのも飽きたし。まあいいか』

「え〜。黙っていたの〜? 酷いわ〜」

『ごめん、ごめん。で、獲物が逃げる原因だっけ?』

「そーよ〜。このままでは、ご飯が取れないわ〜」


(熊肉があるだろ! 熊肉が! どんだけ、食う気だよ!?)


『あの〜カチュアさん』

「どーしたの? ナギちゃん?」

『なんで、デブボアとかいう猪が逃げちゃうのか? 教えましょうか?』

「うん。どーしてかしら〜? 教えて~」

『考えてみてください。自分よりも何十倍の大きさもある敵がいれば、誰だって逃げるよね? 死骸しがいだけど』

「ん〜? それが、どーかしたのかしら〜?」


(おい! どんだけ、鈍感なんだよ!? それとも、私の例えが悪かったのか?)


『いや、だって、カチュア達自身が隠れられていてもが隠れていなければ意味がないだろ?』

「……」


 沈黙してしまった。それから、五分ぐらい、沈黙が続いた。それから、カチュアは後ろを振り向き、先程狩ったばかりのギガンドベアの死骸を、さらに五分ぐらい眺めた。


「あっ! そっか〜熊ね〜。これを見て、逃げていたのね~」

『納得するの遅えよ!!』


 そう、二人とも隠れているつもりでいると思うが、デブボア側は二人の姿が見えなくても、カチュアが背負っているギガンドベアが丸出しだった。


(全く、デブボアが逃げ出すのも当然だよね? 死骸だけど)


「どうしたんですか? 何か分かったんですか?」

「この熊さんのせいで、猪さん達が逃げていくみたいだわ〜」

「……」


 エドナも沈黙し始めた。


(あんたもかよ!)


 しばらく沈黙が続き……。


「……あっ! そうか! 熊か! これを見てデブボアは逃げて行ったんだね」


(だから、なんで、二人揃って納得するのに、五分ぐらいも掛かってくるの!? そこまで考える時間がないと、答えにみちびかないんですか!? 全く! 似たもの同士だな! この二人は!)


「それで、どうするのですか? 置いて行きます?」

「ん〜……ん!」


カチュアは腕を上げて、指を突き出した。


「あっちの方角で音がしなかった? 多分、木と何かがぶつかる音だわ~」


 カチュアが指している方向を見ても、何もない。


「え? 聞こえなかったんだよ! あっちの方角ですか?」


 エドナはカチュアの指を指した方を見ると。


「あっ! デブボアを発見したんだよ!」

「え? 見えたの?」

「あたし、目はいい方みたいなんだよ。遠くにあるものでも、見えるんだよ」


(目がいいのか。遠くにいる獲物を獲るのに適した弓を扱うには、必要な能力だね)


「じゃあ、行きましょうか!」

「お〜!」

『ちょっと、待ったー』

「ん? エドナちゃん、ちょっと待っていてね〜」

「え? うん」

「どーしたの? ナギちゃん?」

『そのギガンドベアを何とかしないと、また逃げられるよ』

「え〜?」

『いや! 「えー?」じゃなくって! さっき、説明しただろう!?』

「……あ! そっか〜」


(さっきよりも沈黙する時間は短い、短いけど……。また、理解し直す必要があるなんて)


「エドナちゃん、この熊を背負ってたら、また逃げられるわ〜」

「え!? 何で……あ! そっか!」


(もう少し、学習しようよ。と言うか、二人はよく今まで生きていられたよね)


「でも、どうしよう?」

「ここから、仕留めしかないわよね~。弓は撃てるかしら〜?」


(まあ、熊の死骸を背負ったままでは、近づいてしまったら、また逃げてしまうからね)


「もちろん。……でも、ここから射っても仕留められないかもしれません」

「そっか〜、困ったわ〜」


 デブボアの体は脂肪が厚く、矢が刺さっても、その脂肪で遮ってしまうだろう。


 二人が考えている最中だ。


(ん? エドナの右腕に付いている腕輪に何か付いている。宝石かな?)


『ねぇ、カチュア。エドナの腕に、何か不思議な腕輪みたいのを身につけている見たいだけど、カチュアは何か知っている? あれ』

「ん〜? ……ああ、あれね〜。多分、魔道具ね~」

『多分って何?』

「わたしは、普段使わないから〜。それに魔道具って色んな形があるから、それが魔道具って断言できないわ〜」

『あ〜そうなんですか。で、その魔道具って?』

「わたしが知っていることは、魔道具があると魔術が使えるのよ〜。あの石見たいなものは魔石というのよ〜。その魔石は魔術を発動するのに必要なのよ〜。それ以外はわからないわ〜」


(魔術って、魔法のことか? いや、同じか? そんなファンタジー世界ではあるまいし。てか、ファンタジーって何?)


『あなたからは聞けそうもないね』

「そうね~。わたしじゃ〜説明できそうもないから~」


(そろそろ、怒ってもいいと思うけど。傍から見ると馬鹿にしているものだし)


『まあいい、エドナに聞いてみて。私もその魔道具に興味あるから』

「わかった~」


(にして。やっぱり、カチュア以外には直接話せないなんて、不便ね。その魔術っていうものが、どういうものかはまだ知らないけど、それ使って他の人でも会話ができないかな。魔法って、何でも出来そうなイメージがあるから。あくまで、イメージ)


「エドナちゃん、ちょといいかしら〜?」

「どうしたんですか?」

「その右腕に付けているのは魔道具かしら〜? 魔石らしき石が、二つもある見たいね~」

「あ、はい。カチュアさんの言う通り、これは魔道具なんだよ。一つは風系の魔石で……もう一つは聖石なんだよ」

「魔術を使えるの~?」

「うん、使えるんだよ。あたしは、風の魔術が得意なんだよ! あ! そうか、でも……」

「どーしたの~?」

「これを使えば射止められるんだよ! ……でも、あんまりやりたくないんだよ」


 エドナは躊躇ちゅうちょしているようだ。


(もしかして、その魔術を使って、獲物を獲えられるのか。でも。なんか、あまり気のにしないようだけど、なんか、問題でもあるのかな? 使っているところを見てみたいけど)


「使うて、魔術を~?」

「うん、見ていてください」


 エドナは、何かを念じるように右手を上げる。すると、エドナの右手に螺旋状に風が纏っていく。そして、それが矢の形となった。


『何なんだ? あれは?』

「あれが、エドナちゃんの魔術のようね〜」


(何か、私の知っている魔術とは違うような)


「風の魔術で、作り出した風の矢なんだよ。これで、弓を引くんだよ!」


 その風の矢を使って、弓を引き放った。 


 シューーーーーーーン!!!


 矢が放たれると同時に、突風が襲い掛かってきた。


『強い! 強い! カチュアの再現かよ!?』


 矢は一直線に進み、視界には入らなくなった。 カチュアがギガンドベアを仕留めた時のように、矢が通ったところには突風が襲い掛かった。


「ふう、こんなものなんだよ」

『すごいな! あれが魔術か! こんなものがあるなんて!』

「……」

『カチュア?』


 カチュアはエドナを見ながら沈黙していた。


「ん!? どーしたのかしら〜?」

『それは、私が聞きたいよ? どうしたの、ボーとして』

「うんうん。なんでもないわ~」


(変なカチュアだ。のほほんとした雰囲気のカチュアだけど、何だろ? 何か気になる)


「獲らえたんだよ。それじゃあ、取りに行くんだよ!」


(私には見えなかったが、デブボアに命中したのか!)


 狩り取ったデブボアのところへ向かう




(にしても、カチュアの聴力は異常だったが、それと同等にエドナの視力も異常だったな)


 デブボアの元へ向かって行ったら、五百メートルぐらい歩いて、ようやくエドナが射抜いたデブボア元へのたどり着いた。つまり、エドナは五百メートル先にいるデブボアに命中させていた。


(これは、私の想像以上にエドナの弓の腕はいいみたい。……それに、デケェ乳が足引っ張らなくって、良かったですねー。皮肉です)


「すごいね、エドナちゃん。大物よ〜」

「うん。でも……」

「ん? どーしたの?」


 デブボアの死骸を、よく見ると、体に風穴があった。


「この風の矢を使うと、体を貫通しちゃうんだよ。肉が削られちゃうんだよ」


(て、あんたもかー! 最近の狩りは、体に風穴を開けるのが、流行りなの? そっか、だから、あの弓技で仕留めるのに、気乗りしなかったのか。食べる部分が削られるから)


「でも、これだけあれば充分なんだよ」


(熊肉で充分だったけどね)


「じゃあ、エドナちゃんの村に行こうか~? これは、わたしが運ぶね〜」


 カチュアは右側に熊を、左側にデブボアを抱えた。


「二匹も抱えるなんて! 力持つなんだね」

「じゃあ、行こうか~」


(あの細腕の、どこに、こんな力があるのか? もしかして、エドナが持っていた、魔道具のような類いなのか? と思う人はいるだろう。しかし、見える範囲でカチュアの体のどこにもエドナの魔道具のような宝石見たいな魔石が付いた装備品は見当たらないな。まさか、このデカチチの谷間に……さすがにないか。そもそも、カチュアは魔道具を使わない的なことを言っていたような気がしたな。それに、魔道具のことも、詳しく無かったし。ほんと。カチュアの、あのバカ力はどこから湧いているのか?)




 狩りを終えた二人は、エドナが住む村へと向かっているところだ。しばらく歩いていると、カチュアがエドナに。


「そーだわ〜。エドナちゃんも、わたしと一緒に旅に出ない?」

「え!? 旅ですか!? 急に、どうしたんですか?」

「エドナちゃんと、旅をしてみたいな〜と思ったのよ~。わたし、今まで一人だったから、エドナちゃんと一緒に旅するのも、きっと楽しいそーだから〜。うん、きっと、そーよ〜」


(一応、私がいますよ。精神体だけど。てか、お互い、今日会ったばかりなのに、旅に誘うなんて、もう信頼しているんだな。早過ぎる気がするんだが)


「あたしも、ずっと旅をしてみいんだよ。でも……」

「あら〜? 何か、事情でもあるのかしら~?」

「はい……」

「……深くは聞かないでおくね~?」


 さっきまで、ののほほんとした雰囲気から一変。カチュアの歩く足が止まった。


「……」

「どうしたんですか? 急に止まって?」

「……エドナちゃんの村は、この方向だよね~」

「はい、そうなんだよ。でも、どうしたんですか?」

「人の声、叫び声が聞こえるわ〜。……それも複数も」

「え? あたしには、聞こえないんだよ」

『悲鳴って、ただことではないようだけど』

「急いで、エドナちゃんの村へ向かった方が、いいわ~」

「え?」


 カチュアは猪と熊を後ろの方角へ、投げ捨て、走り出した。のんびり屋のカチュアとは、思えない程。険しい目つきで。


「あ! 待ってくださーい!」


 エドナも走り出す。


(急がないといけないのは分かるんだけど、ギガンドベアとデブボアが勢いよく捨てて、それが樹木にぶつかって、次々と何本かの樹木が倒してしまうのはどうなんだが)

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