†青髭†

第30話

これは、遠い、遠い・・・

真実の愛を求めた王子様の話・・・

彼は真実の愛を求めた・・・


そう。真実の愛だけを・・・


そして、彼には過去に・・・

何人も、姫が居たというが

誰も帰らず、彼は新しい姫を・・・


探し続けた。皆は言う『何処へ消えたのか?』と・・・


そしてまた、彼は新たな姫を迎えた・・・

姫はまだ幼く、彼も姫を愛した・・・

そして彼も姫の愛に満たされた。


はずだった・・・


彼が城を空ける時が来た・・・

彼は言う。『この鍵を渡しておく。』

『但し、開けてはならぬ。』と・・・


また、真実の愛かと姫を確かめた・・・


姫は、始めは鍵を気にしなかった・・・

でもその間に、部屋に何があるのか・・・

そればかりを気にした・・・


そして、その時を姫は迎えてしまう・・・


召使いに言う。『この鍵の部屋は?』

召使いは言う。『開けてはなりません。』

そして誰もが寝静まった深夜・・・


姫は部屋へ向かった・・・


ひとつの部屋には、貴金属の部屋・・・

姫は微笑む。もうひとつの部屋・・・

狩りが好きな青髭の狩り道具の部屋・・・


姫は思った。『とても素敵。』だと・・・


そして、姫は戦慄なものを目にする・・・

最後の部屋を開けて姫は腰を抜かす・・・

血塗れた床には、何人もの前姫達が居た・・・


そう。確かに姫は居た・・・


首の微かな皮で繋がり吊るされた姫・・・

片目が飛び出し、揺れている姫・・・

顔が切られ、無い姫・・・


血塗れの床には、沢山の姫が居た・・・


姫は、恐れたが、隠す事を誓う・・・

でも実は腰を抜かした時に姫は・・・

鍵を落とし、無くしていた・・・


青髭は帰り言う。『開けてはいないな?』


姫は言う。『はい。』とだけを・・・

そして青髭は『鍵を返してくれ。』と・・・

姫は渡す。そして・・・


『鍵がひとつ無いが見たんだな?』


そう言った・・・

姫は恐れた。あの部屋の姫の様になる。と・・・

姫は助けてと叫んだ・・・


するとたまたま、狩り帰りの狩人に聞こえ・・・


叫ぶ姫に何かあったのかと・・・

城に入ろうとしたが、召使いが止めた・・・

しかし狩人は『何人も帰らぬ城だろう。』


そう言い、召使いの黒く丸い眼鏡を銃で叩き割る・・・


眼鏡が割れ、破片が眼球に刺さり

召使いの目からは、血が流れる・・・

そして、青髭が振り向いた瞬間に・・・


狩人は青髭を、拳銃で撃った・・・


何が起きたかは理解していないが

助かった。とそれだけを思った姫・・・

そして姫は思った。


真実の愛だけを求め。それを手に出来なかったのが、彼なんだと・・・


青髭の指を全て切り落とし、もう・・・

誰も見ぬように目玉をくり抜き・・・

もう、誰も愛せない。抱けない男にし・・・


あの部屋へ、狩人と吊り下げた・・・


姫からは涙が溢れた・・・

ただ真実の愛だけを求めた青髭の哀れさを・・・

扉に鍵を掛け・・・


血塗れて姫達と今頃一緒であろう青髭・・・


彼はただ、真実の愛を求めた。

でも本当は真実の愛を知らなかった。んだと・・・

姫達と永遠に眠りに付いた青髭と召使い・・・




そっと青髭の真実の愛を求めた哀れさに、そっと城に鍵を掛け、姫は『もう貴方様を誰も裏切りません。』そう呟き去った・・・




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る