第88話 運命
「バルディンはどうしてそんなに女の子と仲良くなるの?」
「いやぁ……どうしてって言われてもそんな……」
国王と女王と言う立場でする話があると三人に部屋を追い出された俺とクロウは、王宮の中庭にあるベンチに腰掛けていた。王としての云々言っていたがどう考えてもクロウの笑顔の追求に耐えられなかっただけではないだろうか。俺はそう思いますけどもね。ちらちらと必死にこちらに目配せをしていたので間違いないと思う。
まあ俺としても堅苦しい話をし続けるのもしんどかったし、蚊帳の外だったクロウをフォローしておきたい気持ちもあったので了承して出てきたのだ。
出てきたのだが……。
「俺って……ほら、すぐに誰とでも仲良くなれるタイプじゃん?」
「へーえ、それはまた随分と「仲良く」したんだね?」
「あはは……」
俺は俺で女性関係で絡まれてしまっていた。とほほ。
「いやでもあれだぜ? クラーラ……クラレンス王女殿下は、噂に聞いてたよりも全然良い人だったし、料理も上手だし気立ても良いし……」
「へーえ、へぇーえ?」
ずずずずい、と可愛らしい顔をこちらに向けてくる。確かに圧は感じるのだがそれはそれとして可愛い。え? 可愛くない? 可愛すぎじゃない? むすっとして頬をぷうっと膨らませているが、全く怖くない。あまりにも可愛すぎる。でもここで可愛いーとかいい出したら怒ると思……いや怒らないな多分。普通に喜ぶなこれは。
いや違う、そうではない。俺は頭を振った。
「ま、まああれだ。その、俺は最初からそんなにクラレンス殿下が危ないとは思ってなかったしさ。先入観無しで話できたのも大きいよ、うん」
「……どうして危ないと思わなかったの?」
俺の言葉にきょとんとするクロウ。
「言ってなかったか? お前の姉さんなんだからそう悪いやつじゃないと思ったのさ」
「そ、そうなんだ……えへへ」
あ、機嫌直ったかな?
「そうそう、まあそれに今になって考えてみれば、あのアバロとラディの娘なんだし、変わったやつではあったとしても、悪いやつなわけないよな」
あいつらの子どもなら心配することもなかっただろう。この国何とかしないと……で国を飛び出すお人好しと、連れて帰らないといけない相手が心配だからと大陸の外までついてくるお人好しの子どもなのだから、悪いやつなはずがないのだ。
「…………」
「ん? どうかしたか?」
クロウがじーっとこちらを見つめてきていたので聞き返すと、彼は俺の顔を見ながら答える。
「いや、なんていうかその。本当にバルディンはバルド様なんだなって……」
「様って言われるほどのもんでもないけどな……」
そんなことないよ、とクロウは首を振った。
「昔からよく聞かされてたし、それに……」
「それに?」
クロウは恥ずかしそうに顔を赤くして、細くて可愛らしい手指で顔を隠すようにして答える。
「その、僕が王宮を飛び出したのも、お父様の若い頃に憧れてたっていうか。バルディンに会って、一緒に手伝うよって言ってくれた時も、お父様から聞いてたバルド様の話みたいだなって、そういう気持ちもあったというか……」
「するってーと、もしかしてさっき部屋に飛び込んできたのは……」
「う、うん。その、僕もお父様とバルド様みたいに、バルディンと一緒に冒険したいなって、その、ね。えへへ……」
「そ、そうか……」
照れくさそうにはにかむクロウ。うわぁ可愛い。可愛すぎる。なんだこの生き物は。俺はがばっと抱きしめてしまいたい衝動をぐっとこらえ、こほんと咳払いをする。
「そうしたら、バルディンが実はバルド様だっていうから、その、なんていうかね? う、運命的だなって、思って。うれしくなっちゃった……♡」
「あっちょっと我慢無理かも」
顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにちらちらと上目遣いでこちらを見てくるクロウ。甘えたいのを必死にこらえている小型犬のような可愛らしさである。なんでこんなに可愛いのだろうか。この世界の女の人は基本的に中身ほぼ男みたいなもんだから、逆説的に男であるクロウは純真な乙女のような中身をしているからだろうか。あとこっちの女の人って基本的に可愛いと言うよりかっこいい系だし、そういうところも関係しているのかもしれない。
俺はあまりの可愛さを前に愛しさが暴走しそうになるのをぐっとこらえる。こらえられてるかどうかはさておき流石に王宮内で王太子殿下に過剰に抱きついたりするのはまずい。俺はなんとか平静を装った。
「だ、だけどあれだな。俺の戦いは危ないだろうし、冒険についてくるっていうのを親父さん達が許してくれるかな?」
「うーん、勢いだけで王宮飛び出して旅に出たお父様が止めるとは思わないけど……」
「……それもそうだな」
もし止めてきたらお前どの口で言ってんのという話である。俺は苦笑した。
「しかしあれだぞ? 本当に危ない旅になるぞ? いいのか?」
そう尋ねると、クロウは少し考える素振りを見せた後、花のような愛らしい笑顔を見せた。
「大丈夫だよ、バルディンが一緒なら」
「お、おう……」
だめかも知れない。抱きしめてしまってもいいでしょうか。俺がいよいよ辛抱ならなくなりそうになっていると、後ろから声がした。
「こらっそこのあなた! 怪しい奴め! 人の弟に何をしている!」
「えっ?」
想定していたよりもずいぶんと早い顔合わせになりそうな予感がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます