　舟幽霊、ご存知ですか？

　昔、昔しのお話ですかね、漁に出る小舟には底の無い木杓子を積んで置いて、沖で舟幽霊に会ってしまったら。

　「杓子くれ〜、杓子くれ〜」

　と言われるので、その時に底の無い木杓子を渡すんだそうです。

　間違って、底のある杓子渡しちゃったら、海水を舟に入れられて沈んじゃいますから。

　御用心、御用心！

　これが、結構知られているお話ですね。

　爺いが昔に聞いた舟幽霊は、真夜中に浜辺で舟を引くんだそうです。

「ヨッシャ、コラセッ！ヨッシャ、コラセッ！」

　沈んだ舟は、重いので浜には上がらないそうです。

　「ヨッシャ、コラセッ！ヨッシャ、コラセッ！」

　真夜中に、浜から声が流れてくる。

　たった、それだけのお話です。

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