第10話
「昨日もナザレ村に魔物が出たんだってよ、何人も襲われて壊滅的だそうじゃないか」
「それでもナザレ村はもった方だよ、森や山に近い村町はどこも殆どやられてる」
「ああ、だからまた今朝早くに騎士団が討伐に出たよ」
「退治しても無限に魔物が湧いてくるんだから騎士様もご苦労なこったね」
新たな光の
世界の混乱は、未だ終わっては居なかった。
人口の多い街や村に魔物が現れる事は滅多になかったが、
それでもこの王都に魔物が現れた事は無い、光の神子のお膝元だからなのか、強力な結界のお陰なのか、はたまた騎士団の守りのお陰かは定かではないが。
混乱の時代ではあっても、王都と言うだけで安心感があった。
「神子様が出来損ないだと、騎士団も俺達民衆も苦労するって事だ」
「違げえねえや」
本来なら、全ての人々に畏怖をもって敬われて然るべき存在なのに。
あろう事か人々は、鎮まらない混乱を光の神子の責任だと罵る様になっていた。
金色の目を片方にしか持たない神子の力は完璧ではないのか、理由は定かではないが。
空の暗雲は時々しか晴れず厳しい寒さが続き、冷たい雨に悩まされ時には豪雪となり、食糧難は深刻で、魔物の脅威に加え民の多くは餓えや病に苦しんでいる。
「噂じゃ、神子様の片目は魔物と同じ赤い色をしているらしいぞ」
「わたしも聞いたよ、恐ろしいねえ。この厄災は神子様が招いているんじゃないのかい?」
民衆の口さがない噂はとどまる事を知らず。
「平和をもたらさない神子様なんぞ要らなくないか?」
そう吐き捨てる様に告げた民は、けれど次の瞬間。
首筋にヒヤリとしたモノを感じ、ビクリと硬直した。
「ひっ…」
「そのくらいにして頂こう。光の神子を侮辱する事は決して許されない」
低い声で冷徹に告げる騎士の手に握られた長剣。
その鋭い剣先を突き付けられた民は真っ青になり、慌てて騎士の足下へ平伏す。
「き、騎士様…っ」
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