迷作誕生

第14話

試行錯誤しながら、何とか書き始める事が出来た。


初めは、テーマが“自殺”だけにシリアス路線で書いていたのですが、役者陣を一人、また一人と登場させていくにつれて、シリアス路線からかけ離れていくのです。


う~~ん。


もう一度、初めから書き直しても役者陣を登場させると結果は同じ。


それもそのはず、何せ個性溢れる金の卵?達ですから。


そこに私も登場させたら、収拾がつかなくなってしまう。


もうコントである…………


遺憾! 遺憾!


うん~~捗らない…………


ふとその時、昨晩夢枕に出てきた若くして自らの命を絶った親友の言葉を思い出した。


(「上手く書こうとせず、気持ちで書くんだよ」)


そして、出来上がったのがーーーー


『あかんたれ』と言うタイトルの作品なのです。


ちなみに、“あかんたれ”とは、大阪の方言で弱虫とか駄目な奴と言う意味です。


しかし、この作品が後に、自主制作映画祭の短編部門に入選し、入賞を果たしDVD化され、全国のレンタルショップに陳列されるまでになるとはーーーー


現段階では、誰も知る由もなかったのです。



=数年後=


~レンタルショップ~


仲の良さそうなカップルが入ってきた。


そして、彼女が一枚のDVDを手に取りーーーー


「あっあった! そんなに前ではないけど、なんだか懐かしい……」


「何その映画? 聞いた事も見た事もないけど?」


「あたしの人生のバイブルよ!」


「本当に? じゃあ今、聞いて見たくなった! 借りようよ」


「うん!」


夏なのに長袖を着た彼女が、手に取ったDVDとはーーーー


『あかんたれ』が収録された短編集であった。




            ーおわりー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『今が大切、今を生きよう 』 阿知尚康 @achinaoyasu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ