第42話
礼儀正しく、自分から名乗った新に、あたしも名乗る。
「前田恭。よろしく」
新の顔を見て名乗る。見た目で考えると辰己と同い年に見えるが、敬語を使う気はなかった。
相手によって変えている訳じゃないけどね。
黙って車に乗り、自分の名前を名乗ったあたしに、新が質問してきた。
「怖くないのか?黒豹から聞いているだろ」
「聞いてるよ。でも、怖いという感覚はない」
むしろ、それがどんな感覚だったのか、忘れた。
あたしの顔を見て尋ねてきた新の質問に、あたしが前を向いてはっきり答えると、新は小さな声を出して笑った。その声が横で聞こえ、あたしは新を見る。
黒髪に緑のメッシュを入れて、肩まで伸ばした髪。身長はたぶん、辰己と同じ180センチ……かな。
少し横長な口に鋭く吊り上がった眼は、とても黒かった。
辰己よりも黒く……闇がある眼だ。
切れ長で綺麗な眼の辰己を思い出し、目の前にいる新がそう見えた。
「……何、笑ってるの?」
少し遅れて反応すると、新があたしの顔を見る。
「いや。可笑しな女だと思っただけだ」
そう言った新は、目を細めて柔らかく笑っていた。
なんだ、コイツ。こういう表情、出来る奴なのか。
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