15.シンデレラの大いなる夢
むかしむかし、ある女の子はシンデレラとよばれていました。
灰かぶりという意味です。
いじわるなまま
家事はつらくはありませんでした。
こまかい手しごとは楽しいし、体を動かすのも好きです。終わったあとは、さっぱりして気もちがいいのです。
つらいのは、おこごとを言われることでした。
そうじをすると、
「シンデレラ。すみに、ほこりがのこっていてよ。だめな子ね」
料理をしても、
「シンデレラ。味つけがうすいわ。ぐずな子ね」
つぎの日には、
「シンデレラ。味つけがこいわよ。のろまな子ねえ」
どれだけ気をつけても、だめなところを見つけられて、おこられるのです。
おこごとを言われないように、もっとがんばろう!
シンデレラは、一日中、家事をがんばりました。
手ぎわよくテキパキと、でもていねいに。
おやしき
毎日、きのうよりも上手にできるように、工夫をしました。
前向きで、勉強熱心で、努力家でもあるシンデレラは、みるみる上手になりました。
はたきをパッパッ。ほうきではいて、クルッとターン。
目にもとまらぬ早わざです。
とぶように家事をこなす
とうとう、「かんぺき」に家事をやりとげた日がおとずれました。
そうじ、せんたく、料理、つくろいもの……
どこを指でなぞっても、ちりひとつなく、おやしき中がピカピカと光っています。
自分でもかんぺきだと感じました。おこごとを言われる場所は、もうありません。ほめてもらえるはずです。
まま母は「シンデレラ」と言いました。
「かんぺきすぎるわ。かわいげのない子ね」
シンデレラは、あまりのことに、ぽかんとしてしまいました。
そのあと、思いました。
「……ばっかばかしいわ!」
家事の結果なんて関係なくて、アラをさがして、もんくを言いたいだけじゃないの。わたしをいびりたいだけだったんだわ。
そんな人におこられたりほめられたりすることを、自分のものさしにして生きても、進歩がないわ。
シンデレラは、家事の手をぬき、そこそこでするようになりました。
どちらにしろ、なにか言われるからです。
なにを言われても「お
近ごろ、自由な時間があるのです。
家事の手をぬいたぶんが、あまるようになったからです。
シンデレラはその時間に、魔法の勉強をはじめました。
もともと、魔法に興味があったのです。
よく考えてみれば、ドレスや
ドレスを着たり、舞踏会でおどったり、王子さまにあいさつしたり。そういうことを、お義母さまはさせてくれないけれど、むしろラッキーだわ。
コルセットはきついし、ダンスなんてがらじゃないもの。
わたしは、魔法使いになりたいな。
やさしくて、かしこくて、チャーミングなおばあちゃんになるの。
そして、くるしんでいる女の子がいたら――たとえば、シンデレラとよばれて、舞踏会に行きたいのに行けなくて、泣いている女の子がいたら。
わたしの魔法で助けたい。
シンデレラは、むねいっぱいに空気をすいこみました。
わたしは、前向きで、勉強熱心で、努力家でもあるから、きっと、この大いなる夢をかなえられるわ。
☆★☆★☆
それから数十年後の、ある夜のことです。
だんろのすみで、女の子が泣いていました。
灰でよごれたその女の子は“シンデレラ”と呼ばれていました。
涙のわけは、舞踏会に行きたいのに、ドレスがないことです。
そこへ、どこからともなく、ローブをまとったおばあさんが、あらわれました。つえとほうきを持っています。
目をまるくしたシンデレラに、おばあさんはウインクしました。
「おそくなって、ごめんなさいね。なにしろ、こまっている女の子はたくさんいるの……なんて、話している場合じゃないわ。シンデレラ、もう大丈夫。さあ、かぼちゃを持っておいで」
おしまい。
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