…すごい時代だな

 上野駅の構内で遅いお昼ご飯と生温かい緑茶を買った。お茶には本体の3分の2はあろうかという大きな蓋が付いていて、四角形を二つ重ねたみたいな形をしている。厚めのビニールのような素材に入っているがペットボトルの前身なのだろうか。倒したりすれば中身が簡単に零れそうだ。とにかく、それらを調達すると浅草からの各駅停車に乗った。ここからは若干の長旅になる。交通規則のことは忘れて少しゆっくり考えたかったし、実のところ各駅停車での旅に憧れていたのだ。



 

 四人掛けのボックス席には本当に灰皿が備えられているし、窓も開くみたいだ。話には聞いていたけれど嘘だと思っていた。僕は通路に身を乗り出し他の乗客が近くにいないことを確認すると―――――電子タバコと少しだけ迷って、アメリカンスピリットに火を点ける。教習所では煙草を吸わないようにしているから五時間以上は我慢していた。一応まだ未成年だからね。しかしながら休憩時間には灰皿を囲んで高校生と教員が談笑しているのを思い出し、すごい時代だなと改めて感心してしまう。


 流れる長閑な景色には時々、緑色に混じって牛の姿が見える。これは貴重な光景だ。僕はこっそりスマホを窓に向けながら、窓を上げた隙間から吹き付けてくる風を楽しんでいた。


 そして、ふと朝倉さんの顔が浮かぶ。


 特にカーブで苦戦していると言っていたっけ。ハンドルを切り始めるのが早いだとか遅いだとか言われるから混乱すると話していたし、そう共有フォルダにもあった。まったく、よくもまぁそんな古い、しかも誰も知らないようなデータが残っているものだ。Phloxの仕事には感心を通り越して呆れてしまうことがある。でも今はそれが助けになる気がしている。朝倉さんはきっと相手に負担をかけまいと愚痴や不満を半分も人に話せないで抱え込んでしまっていることだろう。


 そういえば場内のコースですれ違った時に少し違和感があった・・・気がする。何だったのかは思い出せないから、次回またコースで会うことがあれば観察しておこうと思う。もうすぐ始まるS字・クランクまでには間に合うように。あの演習は足止めするには難癖をつけやすいだろうし、自分が運転席に座り技術を見せつけたいような教員もいたようだ。何という時間の無駄だろう、まさに魔のコースだ。


 実際には彼女よりも少し運転歴の長い僕から何か助言できることがあるかもしれない。あれば嬉しいと思っている。彼女の為に何かできれば――――――せっかくアイス仲間になったのだから、仲間として。






 ********************





 久しぶりとは言えないが温泉は良い物だ。一人旅も悪くない。むしろメチャクチャ良い。僕は未来を手離し使命を背負う代わりに現代みらいに於けるあらゆるしがらみから解放されたのだ、これを祝福しないでどうする。なんてね。缶ビールはまだ開けていない。夕飯の時に瓶ビール(大)は一本空けてしまったけれど。



 念願の江戸村には寄ることができたがワールドスクウェアには行けなかった。まだ開設されていなかった為だ。未来あっちにいる時に調べておいてよかったと思う。在りもしない場所への行き方みちなんて聞いたりしたら変な人になってしまうことだろう。この点にはこれからも気を付けなければなるまい。社長・・いや課長と、朝倉さんにもお土産を買ってある。お饅頭ならおばあちゃんもきっと喜んでくれる。余ったものを御自宅用にする予定で漬物も幾つか買った。


 長い一日だったと振り返る。部屋着の浴衣は着ている。温泉から部屋に戻って来たら敷かれていた布団の中で僕は眠い目をこじ開ける。



 重いけれど念のためノートPCを持ってきておいて良かった。清潔ではあるが古い畳に置かれたノートパソコンが不釣り合いで、それが非日常を感じさせる。アンバランスさが否めなくて、これが僕の今いる世界なんだと知らしめられる。この時代に生まれてもいない僕が存在するという違和感。そのうち慣れるんじゃないかな。僕は缶ビールを開けた。何この変な蓋。どうすんの。




 まあ開いたからいいか。


 そんなことよりも「おまえら」聞いてくれ、ここからが本題だ。今日とても不可解なことがあったんだ。










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 “あのスレ”に居合わせた彼らを繋ぐ合言葉をひっそり募集します。チーム名みたいになると嬉しいですが、そうでなくても何でも結構ですので、ダサいのください。後半の大事な場面クライマックスで登場させたいので思い付いた方はコメント欄にご記入いただければ幸いです。


 応募作は全て作中で登場させていただきますが、一番ダサいことを言った方が優勝です。






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