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『縛るつもりはない』と言いながら、明らかに行動は制限されている。ただ、たくさん譲歩してくれているのもわかる。


見た目によらず意外と優しいのかもしれない。軽く説教された意味はわからないけど。



送迎つきで、欲しいものまで持ってきてくれるなんて、それだけ聞けば至れり尽くせりだ。




だけど、そもそも関わることを拒んでいる私にとっては、どれもが納得し難い内容。


それでもまた言い合いするのはうんざりで、頷くわけでもなく、適当に曖昧な返事をして聞き流すことにした。





話が一段落したところで、「帰る」と言った私に、案の定「送る」ときかなかった総長様に、これ以上の押し問答は面倒くさくて、大人しく車に乗ることにした。



けれど、ここでもまた「昨日のコンビニでいい」という私に対して「家」だと言い張る総長様。


数分でも1人になる時間は許されないらしい。




このままじゃ帰してもらえないと判断した私は、自分のアパートの先にある、普通の団地を言い、その前にある公園で降ろしてもらった。



それから意味もなく団地の奥へ入っていき、車がいなくなったのを確認してから、おんぼろアパートに帰った。





想像とはかなり違っていたけれど、予想通り、この日はあの歩道橋に行くことはなかった。

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