P.44

「なんですか?」


「なんで怖くない?」


「はい?」


「怖くねーんだろ?」


「あー、はい」



淡々と返す私に、桐谷耀は顔をしかめた。




「犯されるかもしれねーぞ?」


「あー…そういう可能性もありますね」



狙われるとなれば、そうなる可能性もあるのだろう。昨日もそうなりかけたわけだし。



でも、そうしたら、‘理由’ができるじゃないか。


私は‘理由’が欲しいんだ。



「どこか知らねーところに捨てられるかもしれねーぞ?」


「あー…はい」



そういう可能性もあるのか。そこまでは考えてなかった。



でも、どうせならそっちの方が都合がいい。


‘理由’を作って自分でやるよりも、誰かが手を加えてくれた方が手間が省ける。


それに、結果は同じなのに、‘悪’から可哀想な被害者になれる。


その方がずっといい。残された人にとって。




表情一つ変えず、なんてことないかのように言う私に、桐谷耀はさらにしわを深くさせた。

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