第48話

この夜の事だった。すみれは僕にこういった。おじさん。思い出したことがあるのというので、すみれ、話せるかい。というと、なにを聞いてもおじさんはこれからもすみれといてくれる。というすみれ。ああー何を聞いたとしてもすみれのそばにいるからというので、それじゃ話すね。実は母から言われたことがあったの。私に名前を付けないでいるのは売るためだって。今でもどういうことかわからないの。でも売られる先で私の事を聞くとこういってたらしい。向来(コウライ)って言ってたって。俺はそのコウライが売人につけられた名前であることはわかった。でも俺はすみれはすみれだと思う。おじさんにはすみれはすみれって名前の女の子だ。おじさんはお前を親の元に帰さない。お前が帰りたいなら別だがな。俺が危険な目に合うからとかそんな理由で帰すと思ってるのか。上等だ。おじさんはすみれは大切な女の子だ。という。すまん。取り乱した。という私にすみれはおじさん。おじさんってというすみれの顔が赤いことに気が付かなかった。大丈夫だよとすみれがいうのだ。おじさんはすみれが嫁に行くまで渡さないんだよねというと、どんな男かによるんだがなというと、すみれがくすっと笑った。よかった。やっと笑ってくれた。

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