第26話
どうしたものか……出るタイミングを逃してしまった。
今出たら気まずい上に、不可抗力だがまるで盗み聞きする変態だ。
激しさを増す行為は塞いでいる耳に嫌でも響く。
女の声がわざとらしかったってのもある。
うぅっ……こんなことなら弁当箱見捨てれば良かった。
早く、早く終われ。頼むからワンラウンドで帰ってくれ。
「なっつーーーーん!!!」
『っ!!』
勢い良く教室の扉が開かれ、能天気な声が少し笑いを含んで場違いに響く。
俺の願いをどう受け取ったのか、神様は残酷に強制終了という救いの手を下さったのだ。
「きゃあっ!!」
「あっれれー?お邪魔しちった。」
「チッ……」
「めんごー!忘れ物回収したら退散するってばー。」
男の苛立ちの声に、女の悲鳴。
尚のこと、見つかりたくない3人とも全員帰ってくれと願うしかない。
俺の心境とは裏腹に、機嫌を害った男と続きを要求する女と場違いに明るいテル。
「門蔵くん!」
「帰れ。」
「俺のことはお気になさらず~、ズッコンバッコン続けて続けてー。」
ギィギィと、床の軋む音が近づいて大きな靴が教卓の前でた止まる。
「見~つっけたぁ。」
『っ!おわっ!』
教卓の下にしゃがみ、にんまりと腹黒い笑みを浮かべたテルは、俺の腕を引っ張って教卓から引き出す。
「なになに!?そういうプレイ?何してるのさー。」
『ご、ごめん……いきなり始まったからタイミングなくしちって……』
静まり返る教室に、目を見開いたカップルさんの顔を拝んで目を見開く。
まさかのまさか……女の方は朝イチ姉を迎えに来た確か名前は寺本って教師だった。
寺本は真っ赤な顔を更に首まで赤くしたが、男の方は無表情のまま顔色ひとつ変えない。
しかも……來禅くんじゃないっすか。
「お前……」
俺の顔を見て何か言おうとした來禅よりも早く、俺の体は浮遊感と突然の目線の位置が変わったことに驚嘆の声が漏れる。
『てっ、テル!?』
「捕まってないと落っこちちゃうぜ?ほな、またね~。」
テルは俺を世に言うお姫様抱っこというのをして持ち上げると、教室を飛び出したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます