第5話
制服からしてそうだけど、会話をしてみたい。
「そ、そうだよ!悪りぃか!」
『いいや。実は私たち、理事長室に用がある。出来れば、理事長室に案内してくれる?』
この時の私の顔は、相当に晴れやかだろ。
その証拠に、私の横にいる夏樹と亜樹が顔を歪めている。
自称少年は、一瞬考える素振りをしてから首を横に振った。
「……い、嫌に決まってんだろ!自分で探せよ!」
『そうか……困った。お力を貸してくれないのなら、仕方がない。』
目の前の自称少年は、私の言葉で諦めたのだと思ったようだ。
一瞬ホッとしたような、悩ましげな顔をした。
口角が上がり、目がギラつくのが自分でも分かる。
「早く目の前から消え、」
『本当に仕方がない。実に不本意だ。……しかしこれも君が選んだこと。後で怒らないでよ。』
「え、あ……ぎゃあっ!!!」
騒ぐんじゃねぇよ。
『……うるせぇ。』
「っ、」
自称少年を俵のように持ち上げて、その軽さに驚いた。
細い……触って分かる男の骨格に、“自称”ではなく本当に少年なのだと分かった。
だって、本当に可愛いんだ。
其処らを歩いている女の子よりも。
「お、おろせっ!嫌だぁ!」
流石に耳元で大音量で叫ばれたのは堪えられなかった。
遂、本来の自分が顔を出してしまった。
少年が息を飲むのが聞こえた。
抵抗しているつもりなのだろうが、弱々しくて相手にならない。
「嫌だぁ」と言う声が、甘くて可愛い。
マジでやべぇ……可愛い。
ニヤけるのが押さえられねぇ。
「いっちゃん、怖い。」
「……御愁傷様。」
二人の言葉に、泣き出す少年。
端から見たら、誘拐か拉致に見えるんじゃなかろうか。
『落ち着け。何も、取って食おうなどと思ってない。』
「っ、食うの?」
『……喰いてぇ。』
「ひぅ!」
『……冗談。ジョークだよジョーク。第一私は人間で、人肉は食しません。』
会って数分で喰いてぇって……何を言っているんだ自分。
らしくない自分に、舌打ちをする。
少年は、私の一つ一つの行動に完全に怯えきっていた。
『着いたら、降ろす。早く降りたいのなら、正確な案内をすることをお薦めする。』
挑発するように笑うと、ジタバタと暴れだした。
落っこちそうになると、私の制服を掴んでほっと息を吐き出す。
漸く大人しくなってきた頃。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます