第348話
「玲衣お坊ちゃま。こんなお時間にどちらへお向かいですか?」
ゆっくりと玄関に向かって歩いていると、御手洗に声をかけられてしまった。
時刻は7時。
約束の時間の1時間前だ。
俺はこの時間に外出はしないので誰かに見つかって、怪しまれるのは想定内だった。
その相手が御手洗だったのは、好都合だったかもしれない。
「言わないといけませんか?」
「できれば。」
御手洗を困らせたくはなかった。
しかし、この一連の出来事も知られたくはない。
だから……
「見逃してください。今日は大切な事をしにいくんです。俺の一番大切な事を。」
きっと御手洗に初めて見せた、力強い視線だったと思う。
御手洗は驚いたようにこちらを向いてから…
「気をつけていってらっしゃいませ。」
と見送ってくれたのだ。
それに心の中で感謝を述べ、俺は全てを後にして家から出た。
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