第560話

ニコニコとやり取りをお互いに交わしているこの状況で真理亜は相変わらず自分のペースを突き進む。


柚月の裾を掴みクイクイと引っ張り、目の前に美味しそうなケーキを突き出す。


そして、笑顔で「これもお土産に欲しいです!是非、持ち帰り希望!ダースでいいっすか!?」と言った。


このピリピリした場を掻き消すような空気を読まない話。


これには、柚月も苦笑いした。



「いいよ。でも、そんなに持ち帰りをして大丈夫?全部日持ちしないよ?」



「我が家の冷蔵庫と冷凍庫の数を知らないんですねぇ。うちは私専用の食品庫を完備してます!今日の日のために冷蔵庫と冷凍庫それぞれ1つずつ空けときました。これで、全部保存できますぜ!ローストビーフもエビチリも冷凍庫で保管!業務用って最高!」



キラキラとした目でそう語る真理亜はなんだか眩しく感じる。



「へ〜ぇ、一つ聞いてもいいかな?」



「はい?」



「医師になるんだよね?間違っても食のリポーターとかじゃないよね?」



「ただ、食べたいだけ。美味しいものをたくさん食べたい」



「正直だね。美味しいものをたくさん食べたいってことはこの料理を気に入ったってことだよね?」



「このホテルの料理は最高!メインもスイーツも美味しい!食べ放題の料理ってどこかパッとしないもんがあるんですけど。ここは全部が美味しい!」



真理亜、食べ放題じゃないよ。


真理亜にとってはたくさんの料理が出ているから食べ放題の感覚かもしれないけど。



「嬉しいよ。そう言ってくれて」



………………。


いいんだ。


2人の会話に西田親子もどうやって会話に入ろうか悩んでいるらしい。


こんな会話に入ったところで意味はない。



「いやぁ、よく食べる子ですねぇ。でも確かに美味しいですよねぇ」



あっ………………


会話に入ってきた。



「食べたらどうですか?ずっと話しているだけで全然食べてませんよね?片手にグラスだけを持っても食べられませんよ。ずっと見てたけど、柚月さんのことずっと追いかけてましたよね?確かに美味しいって言ってますけど、どれが美味しいと思いますか?会話だけを楽しむのはいいですけど食べてないのに美味しいとか言わないで下さい」



………………。


真理亜は恐ろしい事を急にブッ込むような子だけど、ここでそれが発動するとは思わなかった。


ずっと見ていたと言っていたけど、本当にずっと見ていたのだろうか?


真理亜なら………………


この子、妙に冴えているからなぁ。


光さんは真理亜の右手を掴んでズルズルと後ろに引っ張った。


言ってしまったあとだからもう間に合わないと思う。


私は、何も聞いてないし見てないですという感じジュースを飲む。



「ハハッ、面白い方ですね。友人たちとの会話を邪魔してはいけませんね。私たちはこれで失礼いたします」



おや?


真理亜に言われてしまったからなのか、急に話を終わらせてこの場から離れて行った。


逃げるように行かなくてもいいと思うけど。


それに、小娘に言われたくらいで………………



「さすが、椎名さんの友人だね。言うことは派手だ」



「取引相手にマズイんじゃないの?」



「いや、大丈夫じゃないかな?」



あなたがそう言うならいいけど。



「凛、違う。さっきのはコイツだ。機嫌が悪いって感じを出したんだ。それで相手が引いただけだ。そんなんでいいのか?」



えっ?


そうなの?


光さんは真理亜の頬を左右に引っ張りながら言う。



「交渉はスムーズに行うもの。長々とやるものじゃないから。あの親子は話が長いし、しつこいからね。取引相手だけどこっちにだって拒否権はあるよ。さて、邪魔な奴らが去ったことだし………………」



そうね。


邪魔な人たちがいなくなったから元の場所に戻るってことだよね?



「椎名さんと一緒に食事でも楽しもうかな」



「いや、そうじゃないでしょ」



「冗談だよ。まだ時間はあるから楽しんでね。持ち帰り用の料理は全て控室に準備するから。荷台も準備するから持ち運びも楽だよ」



「分かった」



柚月は軽く手を振りながら柚月家たちがいる輪の中に戻って行った。


なんだか疲れてしまった。


それからは、特に何もなく終わり控え室に戻ると大量のお土産がテーブルに置かれていた。



「いやぁ、こんな量になるとは………………このお嬢さんの胃袋は凄い。食費も凄そう。これ、全部運ぶので車まで案内して下さい」



奏多は疲れ切っている顔を一切隠していない。


それくらい大変だったらしい。


運んでいる間に着物から私服に着替えて髪型や化粧も落とす。


カーテンを開けるとテーブルにあった料理は全てなくなっていた。


車に行くと海がヒラヒラと手を振っていた。



「お嬢さん方はこっちの車にどうぞ。こっちはお土産でいっぱいなん」



そうでしょうね。


海はお土産を運ぶ係らしい。


光さんは運転席で髪をワシャワシャとかき上げていた。


そしてネクタイを緩ませる。



「よ〜し、お前ら帰るぞ。こんな場所はすぐに離れるべきだな。さすがに疲れた」



光さんは私たちが車に乗るのを確認すると発進させた。


私は背もたれに背を預けて深いため息をする。


私も疲れた………………



※作者より※


大変申し訳ございません。

体調が悪化してしまいお休みをして治療に専念することにしました。

更新を楽しみにしていた読者の方には申し訳ございませんが、更新再開までお待ちください。

更新再開については体調が良くなり次第、近況ノートにて報告いたします。


※ご報告!!

病が落ち着いてきたので、更新再開のお知らせです。

4月5日から再開させていただきます。

まだ1ヶ月先になってしまいますが、よろしくお願いいたします。


2026年3月3日

作者より

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