第574話

長々と下らない会話をしていたら奏多の狙い通りになってしまう。


その下らない会話をどうにかするためには、一発で終わりにする何かを提供すればいい。


なのに、なぜ引く?



「海、貴方はどっちの味方なの?」



「嬢ちゃん、最終兵器は最後に出すもんだ」



「この人相手にちまちま小出しする必要はないと思う」



「いや、そういうことじゃなくて!う〜ん………………あぁ、うん。もういいや。終わったことだし。で?壱夜は暇なんか?家のゴタゴタは片付いたん?何やら跡取り問題が活発になってるらしいって聞いたっちゃ。まぁ、荒れててもこっちは痛手じゃないから問題ないっちゃ。ここの会計はお前持ちで。壱夜待ちをしちょるんよ?そんくらいはやってもわらんとなぁ。俺ら見かけてすぐ連絡入れたんやろ?その時から決まっとるん。何もしなーで事を進めようとしちょるのは無理だっちゃ。いやぁ、壱夜が来る前に話せて良かったわぁ」



奏多は嫌そうな顔をしたが、しょうがないと思う。



「分かりました。奢ります」



「ありがとーなぁ」



「他に何かさせようとしてましたよね?」



「ハハッ、情報は確実な奴から聞いた方が早い」



情報?


あぁ、奏多から情報収集しようとしたのか。


この人から貰う情報って役に立つの?



「壱夜から聞いてもええけど、ニコニコ笑って誤魔化すこと多いからなぁ。探るの面倒だし、疲れるし。お前がダメなら壱夜に聞くしかないかぁ、とは考えていた」



「壱夜さんから聞き出そうとするのが凄いです。さすが、壱夜さんの元部下です」



2人の会話を聞いてもいいけど、裏の話って疲れるんだよね。


頭を使うから?


何か含みがある話し方をするから面倒だ。


暗号みたいなときもあるし。



「結局、柚月が来るのを待つってことだよね?いつ来るの?遅くなるなら帰るけど」



私がそう言うと奏多が「えっ!?」という驚きの声をあげた。


なぜ驚く?


なぜ、ちゃんと待つと考えた?



「私たちの食事の邪魔をした分はちゃんと責任をとってもらうから、ここの会計は貴方がしっかり払いなさい」



「うわぁ、横殴りされた感じ。まさかの展開に本気で驚いたよ。海さんの話と違うってどうなの?なんで、横から攻撃したの?上手くまとまりそうだったのに、ぶっ壊す発言やめて」



裏相手に優しさは必要ないでしょう。


そっちの常識とこっちの常識は違う。


………………。


おや?


これって、さっきの婚活話にも言えるのでは?



「これだよ。貴方の常識とこっちの常識は違う。まさに、この状況だと思う。さっきの女性の人もそうだったと思う」



「いや、なぜ最初に戻った!?」



「貴方が疑問をぶつけたから」



「そうだけど!そうなんだけどぉ………………うん。そうなんだけどね。それも違うっていうか。もう、なんか疲れる」



何が不満なんだ?


ちゃんと答えてあげたでしょ?



「嬢ちゃんは、スイッチが切れた状態だと放棄しちょる。ちょっとだけ入りにしてくれん?軌道修正すんの面倒だわぁ」



別に軌道修正しなくてもいいでしょ。


私たちがいなくなった後でやり取りしてよ。



「お待たせいたしました。抹茶パフェをご注文のお客様」



追加注文した料理が運ばれてきた。


私は低めに手を挙げる。


店員さんは私の目の前にパフェを置くと、次の料理をテーブルに置いていく。


最後に伝票をテーブルの上に置いて、一礼してから戻って行った。


大塚さんが追加注文した料理はサーモンカルパッチョとカニクリームコロッケだ。


カニクリームコロッケ、熱そうだなぁ。


外より中身が熱いよね。


私は唐揚げを少し食べて熱さを確認する。


うん、こっちは大丈夫だな。



「2人共。ゆっくり食べてね」



奏多は任務がしっかり遂行できるのか不安らしい。


パフェは溶けるからなるべく早く食べようと思っているけど。


唐揚げ食べたら、次はパフェとポテトだ。


しょっぱいのと甘いのを交互に食べるの好き。



「この辺で仕事しちょるん?はよー、終わらせてもらわんと。嬢ちゃんは、本気で帰る子やぞ。冗談で言う子じゃない」



「分かってますよ。あと、30分くらい?」



なぜ、疑問系?


それは30分で来られないという意味では?



「うまっ!このカニクリームコロッケ美味しい!椎名さんも食べてみて!」



「ありがとう」



大塚さんにおすすめされて一口もらう。



「本当だ。美味しい」



カニの身がちゃんと入っている。


へ〜ぇ、私も頼もうかなぁ………………


でも、お腹の余裕がない。


次、来たら頼もう。



「君たち、無視しないで」



奏多のことは一旦置いて、食事に集中することにした。

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