第490話

ショーケースの中にはキラキラと輝く宝石さんたちがズラリと並んでいる。


金額はどれもゼロが多い。


当たり前だけど、万単位だ。


こんなところに入ってどうするのか。


まさか買うの?


………………。


この人いくら貯金があるわけ?


お小遣い制じゃないって分かってるけど。


裏の仕事がいくら入るのは分からないから。


私の場合は丸々捧げていたようなものだし。


把握していなかったなぁ。



「お前、指のサイズ何?」



「えっ?私の?」



指のサイズなんて知らない。



「さぁ?」



「やってみろ」



測るの?


店員さんはニコニコ顔で計測する道具を取り出した。



「測らないとサイズ分からないだろ」



「それはそうだけど」



「小さいヤツ買ったら大変だろ」



「………………」



「お前の好みも聞いておかないと。首に掛けるのはなしだ。それは別のがある」



亜紀は私の手を掴みショーケースの上に置く。



「では、失礼致しますね」



店員さんは1個1個合うサイズを探す。


測っているのは左手の薬指だ。



「そうですねぇ。10号でしょうか?」



10号って言われても。



「どのデザインでもいけますか?」



「大丈夫ですよ。婚約指輪ですか?結婚指輪ですか?」



「結婚指輪で。下見に」



「そうですか。デザインも豊富なのでカタログもございます」



何やら席に通されてカタログまで見せられる。


隣に座っていた人たちの話が聞こえてくるのだが、女性の人は8号らしい。


………………。


私の指は細くないって分かっていたけど、数字にされるとちょっと嫌だな。


いや、そんなことよりだ。


亜紀は先の先へと行っているらしい。


進みすぎる。



「こういう彫り絵もございますが、シンプルなデザインですとこちらでしょうか?」



2万円のものから20万円など幅広い金額が目の前に広がる。


ショーケースから取り出された物が目の前に置かれてしまいマジマジと見てしまう。


亜紀は金額なんて気にしないのか、20万円クラスのものをペラペラ見ていた。


そして、パタンとカタログを閉じる。



「ありがとうございます。検討します」



「はい、ありがとうございました」



店内から出て少し歩いたところで亜紀の服を引っ張る。



「どういうつもり?」



「指輪を買う段取り中のつもり」



「いろいろ飛んでると思わない?」



「思わない。というか、ちょうどいいだろ。凛の指のサイズも分かったし。もっと太いのかと思ったわぁ。あぶねー」



失礼なことを言ってるし。



「相談もなく買うつもりだったわけ?」



「そうだな」



「受け取らないとは思わないわけ?」



「思わない。受け取らないという言葉は存在しない」



強気だな。



「お前は俺以外にいると思うか?」



………………。


それを言われてしまうと………………



「………………いない」



「柚月は別口だろ。ありゃ対なんだろ?凛の親みたいな感じには暮らせない。だから省けるわけだ」



「焦っているのかと」



「かっこいい男になるのは無理だ。そんなの俺には似合わないだろ。変な我慢したところで後悔しかない。だったら、やりたいことをやる。俺のセンスに期待しろ」



なんだろう。


不安しかない。


ゴールドの指輪を選んできたらどうしよう。


指輪のことで頭の中がいっぱいになりすっかり忘れてしまっていたことがある。


それは、地元に戻ってきた時に思い出した。


真理亜からの大量なメッセージを無視していたわけで、スマホをタップしたらそれが表示されるわけで。


私の眉間の皺はとても寄っていると思う。



「ねぇ?ちょっと寄って欲しいの」



「どこに?」



「真理亜のところ。場所はここね」



地図を見せる。



「白井か。護衛がいるんだろ?」



「その護衛が使い物にならない」



「………………何に負けた?」



「真理亜に負けた」



「警護対象者に負けちゃダメだろ。降ろせ!」



私に言われても困るけど。


お父さんに言ってくれないと。


真理亜の押せ押せに負けちゃったのだろう。


ミンエイさんも真理亜には弱いらしい。

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