第488話
「なんだ?」
「真理亜からメッセージがきてるらしい」
「白井から?なら、なんでそんな眉間に皺が寄っているんだよ」
「いや、かなりの数が来てるからさ。嫌な予感がするの」
「………………マジか」
「うん」
会話中でも私のスマホはずっと震えている。
画面をタップしてメッセージを見る。
少しだけ内容を見て、一旦画面を真っ暗にする。
うん、どうやら思った通り面倒なことになっているらしい。
何がどうなってそうなったのだろうか。
まず、ここで真理亜に送らなければならないことがある。
【今、水族館にいるからそっちには行けない】と。
一番大事なことは、現場に行けるか行けないかだ。
ご飯を食べてショーを見ただけだ。
この状況で帰ることはできない。
これから海獣エリアに行くところなのに。
ペンギン見てない。
大水槽も見てない。
見なければならない物がまだいっぱいあるのに帰るわけにはいかないのだ。
見捨てたわけじゃないよ。
そっちにはミンエイさんがいるから大丈夫だと思ったの。
「いいのか?つーか、何?」
「全部は見てないけど、出会ったらしい。駅前で」
「誰と?」
「雪と」
「いつものことだろ。珍しいことじゃないじゃん」
「雪と一緒にいた人が珍しいの」
「アイツと一緒にいる奴?まさか柚月か?」
「うん」
「出会いたくない組み合わせだな」
「会ってしまったものはしょうがない」
雪が真理亜のところにいなかったのは柚月のところにいたかららしい。
そのまま、そこでさようならってするわけもなく、現在は近くの事務所にいるらしい。
下が貸店舗で上が事務所の2階建て。
そういう事務所をいくつか持っているのは分かっているけど、カフェとかに入ってよ。
「いいのか?」
「大丈夫でしょう。真理亜だけじゃないし。正月なのにおかしなことしないと思う。もし何かするとしたら常識なさすぎ」
「まぁ、白井だしなぁ」
「真理亜は黙ってるタイプじゃないから」
さぁ、トドとペンギンを見に行きましょう。
ペンギンの歩き方って可愛い。
なんであんなに可愛いのだろうか。
じっとペンギンたちを見ていると1匹のペンギンが眠そうにコクリコクリと揺れている。
だが、そこは崖の先端部分。
なぜそんなところで眠そうになっているのだろうか。
そんなペンギンを写真に残そうとスマホを取り出しタップする。
メッセージはまだ続いているが今は気にしない。
「あっ、落ちた」
眠りそうになっていたペンギンは体が前に倒れてそのまま水の中に落ちた。
そして、「何かありましたか?」と普通に泳いでいる。
「凛は動物好きか?」
「えっ?」
「動物を見ているときの凛は柔らかい」
「まぁ、そうね。好きかも」
「獣医にも向いているかもな。人間っていうより動物と向き合うだろ?」
獣医?
確かに動物は好きだけど、命を扱う職業は荷が重すぎる。
「責任感で潰されそうだから無理。命って一度しかないでしょ?やり直しができないもの」
「………………次、見に行くか」
「うん」
病気で運ばれてくる動物たちを診察する度に思ってしまうだろう。
絶対に助けなければならないって。
それって凄い大変なことだと思う。
助からない命は必ずあるのだから。
死を間近に感じる職業って精神的にも辛いだろう。
飼い主さんが大切にしていた家族だ。
どれも軽い命なんてないのだから。
水族館から出るとまだ外は明るかった。
露店もまだあるし、サーカスも第何部か知らないけどやっている。
「石?販売してる」
「パワーストーンだ。幸運とか金運とか色々ある。ブレスレットとかネックレスとか。髪飾りとか」
見てみるとかなりの量が並んでいた。
金額もお手頃から高価なものなど様々だ。
「綺麗」
「興味出たか?珍しいな」
「パワーストーンは知っていたけど、こんなに種類があるとは思わなかったの」
「ふ〜ん。ペンギンのキーホルダーあるぞ。水族館絡みか?こっちは厄除け。これ、必要じゃね?」
「厄除けでパワーストーンは買いたくない。私、あっち見てくる」
「おー」
水族館のお土産も販売しているらしい。
そうなると、お店から飛び出してきたのか。
寒いのに………………
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