第611話
まだかまだかと待っている間に返事が来る場合と、ちょっと時間を置いた後に返事が来る場合があるが、今回は後者だったようだ。
「インターンシップ行けるんだ?ちょっと時間かかったね。あと少しで夏休みじゃん」
大塚さんはお弁当の蓋を開けて箸に手を伸ばした。
卵焼きと唐揚げと白ご飯。
今日のお弁当は自分で作ったらしい。
「時間は掛かったけど、行けるから問題ないよ」
「平日なんだっけ?」
「うん。月曜日から金曜日までの5日間」
なので、その期間は短大に行けないので申請しなければならない。
日程表を大塚さんに見せると「文化祭の打ち合わせと被るね」と言った。
就職活動が優先のため、用事がある場合は打ち合わせに参加しなくても良いと言われている。
「………………文化祭は他の人たちがいるから大丈夫だよね」
「大丈夫だよ。大体決まると思うけど、変な方向にはならないと思うよ。急にコンセプト喫茶になりました!とかならない」
それなら良いけど。
「夏休み期間中にも準備するからなぁ。というか、そこが大事なんだって。しっかり準備をしないと本番までに終わらないらしいよ」
「カフェ系なら更に準備が倍だったかもね。販売のみだったらまだマシなのでは?」
「カウンターとかも作るんだよ」
それはレンタルでいいのでは?
木材と工具で作るの?
それはちょっとおすすめしない。
という、大変でしょ?
「レンタルでは?」
「見た目も大事ってことじゃない?」
大事ではあるが、綺麗に作れるか分からないじゃない。
それなら、レンタルしたほうがいいと思う。
家に帰ったあと、インターンシップの受付が完了したことをお母さんに話して資料を見せると、目が輝き出した。
「ここのシュークリームは馬鹿売れなんだよ。いくつも販売店舗があるのに売り切れが多くて。同僚が差し入れで持ってきたことあってさ、開店前に並んで買ったらしい」
「そうなんだ」
「いいところ行くじゃない。来週の月曜日からなんだ?」
「うん」
「会社までは電車と徒歩ね。送り迎えはいいの?」
送り迎え?
………………。
それはなんか嫌だ。
他の人は送り迎えで来ないよね?
自分の家から交通機関を使って行くはずだ。
「大丈夫。9時から18時まで」
「お弁当は?」
「会社の食堂があるらしいよ。お弁当持参でもいいって。でも、食堂が気になるから、そっちでお昼は済まそうかなって思ったの」
「そうだね。安いし美味しいと思うよ。そういう場所は関係者以外は使えないからねぇ」
だよね。
私もそう考えて食べたくなった。
別に社員食堂に行きたいからインターンシップを申し込んだわけではないけど、食に携わる仕事をする上で気になるのだ。
「凛は大忙しね。来週の土曜日は光さんの出店を手伝うんでしょ?天気予報だと晴れみたい。暑いけど」
「なんか、浴衣を着るって」
「………………えっ?何それ?私、そんなに聞いてないけど!?」
やはり、浴衣に反応したか。
普通の私服でやるより、祭りらしく浴衣を着て接客したほうが雰囲気出るだろうと真理亜から意見が出たのだ。
大塚さんもそれに賛成だったので、浴衣姿で参加することになった。
海だけ私服はおかしいので甚平で立つらしい。
「今、浴衣の件を話したからね」
「もっと早く言ってよぉ。ちゃんと準備できないじゃん!母親の楽しみを奪わないで!」
家にあるものでいいから、準備しなくてもいいよ。
真理亜も大塚さんも浴衣あるって言っていたし。
「家にある浴衣でいいよ」
「現在進行形でやっているから、それを着て欲しかった!」
どうやら仕事で浴衣の製作をしているらしい。
試作品を着せたいということだ。
「それは次の機会ってことで。汚したら大変だから。袖まくりするんだよ?皺になっちゃうかもしれない。果汁が飛ぶかもしれない」
「しょうがない。ちょっと早めてってお願いしようかな」
全く聞いてないや。
動くからシンプルが良かったのに。
というか、私は甚平がいいな。
………………。
「私、甚平がいいな。浴衣は動きにくいから嫌だ」
「えっ?甚平ならあるよ。甚平にする?」
………………。
どうやら、甚平も作っていたらしい。
お母さんはニコニコ顔で甚平にしようか!可愛いよ!と言った。
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