第10話

「ヒロくん…………って誰だっけ」


「…お前、」


「嘘嘘、冗談だよ。六年もお世話になった親戚の息子だし、仮にも今朝まで同じ家に住んでた人を忘れるわけないじゃん」


「……」




ヒロくん———…



私を引き取った叔父さんの息子であり私からすれば従兄にあたる人だけれど、


六年一緒に住んでみて分かったことは彼はかなりの変わり者だということ。




いつからそうなのかは分からないけれど、ソウちゃんより二つ年上である彼は私が叔父さんの家へ来た六年前からずっと引きこもりだ。


外に出ているところなんて、一緒に住んでいた私ですら六年の間に数回見た事があるくらい。



そんな彼がわざわざ家から出てソウちゃんの家を訪れるなんて、一体何事だろう。



「…言った?ここの場所」


「いや、言ってねぇよ」


「そっか……良かった」









———…ヒロくんは決して悪い人ではない。



ただ、独特な性格をしているからなのかヒロくんと話すと全てを見透かされているみたいでたまに怖くなる時があった。



叔父さんの家に引っ越した初日、叔父さん家族に「これからお世話になります」と言った私にヒロくんは「どっちがお世話になるんだろうね」と独り言のように呟いた。


私はそれが、六年経った今でも忘れられない。



他にも“見透かされているみたいだ”と思う部分は一緒に生活をする中で何度もあって、


朝顔を合わせたから「おはよう」と言った私に「言いたくないことはわざわざ言わなくていいよ」と言ったり、


私が脱衣所に忘れていた携帯をヒロくんが部屋まで届けてくれて、私がそれに「ありがとう」と言えば「取ってつけたようなありがとうだね」と言ったり…



それがいつも優しい笑顔で言われる上に私も私で全力で否定できないもんだから少し恐ろしくもなる。




だって挨拶なんてあの家で上手くやろう、良い子でいようと思うから言っているくらいのものだったし、


脱衣所に忘れていた携帯を届けられた時だって、正直自分の入浴直後に脱衣所に入ったヒロくんのことを私は少し気持ち悪いと思ってしまったから。

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残り火【完】 しんのすけ @sinno

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