第164話
琥珀との約束を守れる日が来る事を、どんなに望んで来たか・・・。
渡米しても、いつも考えていた。
いっそ、リクを探し出して文句の一つも言ってやろうか?なんて事も考えた。
でも、それじゃ意味がないんだと自分に言い聞かせた。
琥珀の為に渡米して治療に専念するリク。
それを待ち続ける琥珀。
2人の運命に誰も入り込んじゃいけないんだ。
この日を・・・ようやくこの日を迎える事が出来た。
モデルの仕事上、都合がつかなくて帰国が今になってしまったけど。
今日こそ、ぶっ飛ばしてやる。
そして言うんだ。
『もう2度と琥珀から離れんな!』って。
窓の外を眺めながら笑みを浮かべた。
「兄ちゃん、何を1人で笑ってんの?気味悪い。」
チッ・・・隣から覗き込んでくんな!
「煩いよ、要。」
静かに殺気を放つ。
「・・・ご・・ごめん。」
素直で宜しい。
だったら、俺の笑顔の訳を教えてやってもいい。
「笑ってるのはね。今日こそ、琥珀との約束を守れるからだよ。」
心から嬉しいと思う。
「琥珀と約束?」
要を不思議そうに俺を見る。
「そ、約束。俺達がさ、母さんの墓参りに初めて行く事が出来た日に、約束したんだ、琥珀と。」
そ、あの日した約束と、今日こそ果たす。
「そっか。良かったね。」
要もニッコリ笑った。
「うん、琥珀の幸せを祝う前に、約束を果たすよ。」
新郎の顔に多少痣が在っても仕方ないよね?
それだけ、琥珀に寂しい思いをさせたんだから。
フフフ・・・と悪戯っぽく笑う。
「着きました。」
運転手の言葉と同時にタクシーのドアが開く。
料金を払って外に出ると、目の前には白くて可愛らしいチャペル。
建物の側に目的の人物を見つけて、俺は駆け出した。
「あ!兄ちゃん、荷物。」
要の声が聞こえた気がした。
「ま、仕方ないか?」
なんて呟いた要の言葉は聞こえなかった。
俺は走りながらほくそ笑んで、拳を握りしめた。
End.
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