第138話
俺は母親の姉に連絡を取り、病院へ運んだ。
信じられる大人はその人しかもういなかったんだ。
父親は母親が叔母の手によって病院へを搬送される間も姿を現さなかった。
もちろん、入院中一度だって姿を現した事は無かった。
あの家政婦の女は、あの日以来姿を見かけなくなったところを見ると、命は惜しかったみたいだ。
叔母は母親を病院のスタッフに預けるとすぐに俺達の傍にやってきてくれた。
「2人とも大丈夫?さ、これでも食べて。」
そう言って差し出されたのがチュッパ。
確か、イチゴ味だった。
「・・・ありがと。」
と言う俺と、
「・・・・。」
無言のままそれを受け取る要。
母親のあんな姿を見て、相当ショックを受けていたに違いない。
だから、俺は敢えて何も言わなかった。
叔母がくれた飴は、凄く甘くて騒いでいた心を少し落ち着けてくれた。
叔母は俺達の前にしゃがみ込むと、同じ視線で話し出す。
「お母さんね?少し疲れちゃったみたい。しばらく入院したら、2人の所へ帰れるようになるからね?寂しいだろうけど、我慢できるかな?」
優しい声と優しい笑顔に、俺を要は頷いた。
「叔母さん・・・あの人は?」
頭から血を流していた父親の顔が頭に浮かぶ。
「えっ?義兄さんは・・・用事でこれないみたいなの。」
叔母が悪い訳でもないのに、申し訳なさそうな顔をされた。
「叔母さん、お母さんがこんな風になったのはアイツのせいだ。」
憎悪に顔が歪む。
「ごめんね、叔母さんが早く気づいていればね。」
叔母の瞳に涙が潤んだ。
謝らなくてもいいの。
叔母さんが悪い訳じゃないのに。
「叔母さんのせいじゃないよ。」
と言ったのに、
「ううん、私にも責任があるわ。義兄さんとの結婚を後押ししてしまったのは私なのよ。」
叔母は両手で顔を覆って後悔の涙を流した。
「違うよ。叔母さんは悪くない。全部あいつが悪いんだ。」
俺は口の中に入れていたチュッパをガリガリと噛み砕く。
甘いはずの飴がしょっぱく感じたのは、いつの間にか涙を流していたからだった。
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